MQ会計と管理会計

ある酒屋の店主と税理士の会話

これから紹介する酒屋さんは、昨年は300万円の赤字です。これまでは売上重視の経営でしたが、ある日税理士から「変動損益計算書」の話を聞き、一緒に作ってみました。 

 

「変動損益計算書」とは、損益計算書に記載された費用を
 変動費と固定費に分解して作成した損益計算書です

 

数字だけではわかりにくい!

ということで、これを図にしたものが次の変動損益計算書です。

(これはMQ会計表ではありません) 

 

  

税理士からこの表の説明を受けた店主は、「なるほど、図形に置き換えるとわかりやすい!」ということで、これを参考に来年の計画を作ることにしました。

 

(税理士)

現状の赤字から脱却するために来年は「トントン」を目指しましょう。

 

(店主)

わかりました。このまま赤字が続くと先行き資金繰りも心配です。

で、どうすればいいのですか?

 

(税理士)

トントンにするには次の3つ方法があります。1番目は利益がちょうど0のときの売上高を求めて目標にします。2番目は限界利益率をあげること。限界利益という言葉は聞きなれないかもしれませんが、売上高から変動費を差し引いた金額で、ここでは粗利益だと思ってください。限界利益率とは売上高に占める限界利益の割合のことで粗利率と同じです。そして3番目は固定費の削減です。

 

1番目の「利益がちょうど0になるときの売上」のことを「損益分岐点売上高」といいます。これが計算式です。

 

 損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)

 

この公式に当てはめて計算すると、このお店の損益分岐点売上高は1憶750万円になります。あと750万円(月割りにして62.5万円)売上高を増やせば利益がゼロになる計算です。

 

経営安全率(安全余裕率)とは、「この比率の分だけ売上が減少してもまだ赤字にはならない」という指標ですが、今回はマイナスなので、「あと7.5%売上を増やさないとトントンにならない(注1」という意味です。

 

2番目は限界利益率(粗利率)をあげることです。来年の売上がもし1億円であれば、粗利率の高い商品を販売して40%から43%に上げないとトントンにはなりません。あと3%上げる努力が必要ですね。(注2

 

そして3番目は固定費削減です。あと300万円減らさなければ利益は0にはなりません。

 

と言って書いた図が次の3つです。

  

1.売上をあと750万円増やす

2.利益率をあと3%上げる

3.固定費をあと300万円減らす

 

(店主)

なるほど、よくわかりました。この3つを意識しながら計画を作ることにします。

ところで先生、この3つはどうやったら実現できるんですか?

 

 

注1) 管理会計では「経営安全率=売上の減少に耐えられる」という指標ですが、MQ会計ではPとQに分解するため、売上ではなく「販売数量Qの減少に耐えられる」というのが正しい表現です。

 

注2) 「粗利を増やすには粗利率の高い商品を売ればいい」というのは間違いです。率というのは結果です。ここでは「利益率」を上げているのではなく「原価率」を下げることで限界利益率を上げようとしています。原価率を下げるということは、仕入先に値引きを要求するということです。

 

  

これからMQ会計を学ぼうとしているみなさん、あるいはすでにMQ会計を実践しているみなさんは、「この税理士の言っていることがおかしい(間違っている)」ことに気づきましたか。

 

「利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)」の134ページから141ページを読んでみてください。たしかに「管理会計がオカシイ!」ことに気づくはずです。それは、管理会計に「数学や科学」がないからです。「経営安全率」については139ページに詳しい解説が載っています。

 

会計思考からは利益を増やすアイデアは生まれない

「税務会計で作られる決算書がわかりにくい」ということで、多くの税理士やコンサルタント、銀行マンや経理部長は管理会計を学びはじめます。この店の赤字を解消するには、
 
1.損益分岐点売上高まで売上を伸ばす
2.限界利益率を上げる(変動費率を下げる)
3.固定費削減
 
この3つは「レントゲン写真」、「静止画像」、「机上の空論」。この先の行動にはつながりません。これが会計の限界です。
 
この店主が疑問に思ったように、「この先具体的に何をどうしたらいいのか」が、全然わかりません。
 
多くの税理士やコンサルタント、銀行マンや経理部長は、会計の枠組みの中で考えることには慣れています。「会計思考」です。ところが経営者は、会計思考とは関係のないところで考えます。
  
利益を増やすときの発想力、想像力、創造力、アイデアというものは、会計思考から抜け出さないかぎり生まれません。会計の知識や経験から生まれるものではないのです。
 

MQ会計で考えてみると・・・

ある日、知人の勧めでMQ会計セミナーに参加します。管理会計とMQ会計、どちらも図形で表わすところは一緒ですが、中身はまったく違うことに気がつきます。Q(販売数量)の重要さがわかり、さっそく自分のお店のMQ会計表を作ってみました。

 

「なるほど、うちの店は1年間で百万本も売れてるのか、

 こんなに売っているのになぜ赤字なんだ!」

 

MQ会計表をしみじみと眺めながら、店主は考えました。

そういえば講師の先生が言ってたな。

「MQ会計は要素法。P・V・Q・F・Gの5つの要素で考えれば、どんな業種にも当てはまる」と。

商品や製品、サービスの単価構造(P・V・M)と販売数量Qの組合せによって会社の収益構造がほぼ決まってしまうんだった!

うちの商品の単価構造の平均はPが100円、Vが60円、Mが40円、そしてQが100万本。ということは、P・V・Q・Fをどのように変えればGがちょうど0になるのか、やってみよう!

 

 

上に表示したMQ会計表は、決算書よりも情報が増え、たしかにわかりやすくなっています。しかし!これらのP・V・Q・F・Gの値だけでは、意思決定に使える情報とは言えません。「PをアップしVを下げQを増やしFを減らす」というだけでは、けっして行動にはつながりません。

 

もし、あなたが社長だったら、

もし、あなたが税理士やコンサルタントでMQ会計を伝える立場だったら、、、

 

数字や指標を見て分析や解説をしてしまうと「なんとなくわかった気になってしまい」すぐに限界がきます。これは決算書でもMQ会計表でも同じなのです。

  

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