【部門別損益計算のなぞ】
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■□ 戦略会計・DC・マトリックス会計
■□ 社長のための会計学 【 マトリックス通信 】
■■ Vol.143 2008/02/14
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■制度会計は法律に縛られ、経営の実態がわかりにくいため、
企業は管理会計を導入します。
例えば、事業所ごと、店舗ごとなどの部門別損益管理です。
企業全体では儲かっているけれど
どの部門が利益が出ていて
どの部門が業績不振なのかを知りたくなります。
社長だからおおよその見当はついています。
でも数字できちんと確認するために
会計システムを強化します。
■部門別損益計算書を作成する上で問題となるのが
「本社経費」です。
役員報酬、総務経理、事務関係の社員の給料、
本社の家賃、電気水道、リース料など、
どこの部門にも属さないこれら「共通費」をどうするかです。
そこで経理部長は考えます。
☆ 各部門に適正に配賦をしよう!
そして経理担当者は「配賦の仕方」を研究します。
■経理部門にとって重要なのは
☆どのような基準で配賦するのが
我が社にとって一番良いか
です。
部門別売上高の比率、
部門別人件費の比率や社員の人数頭割り、
部門(店舗)別売場面積の比率など、
いろんな参考書を見て出した結論は、
○ 共通費の3分の1は売上高比率
○ 3分の1は人件費比率
○ 残りの3分の1は売場面積比率
■毎月作成される部門別の損益計算書をもとに
営業会議が開かれます。
(社長)
どうしていつもこの部門は赤字なんだね。
(経理部長)
はい、
この部門は本社経費を配賦する前は黒字なんですが
本社経費を負担させると赤字になってしまいます。
本社経費の配賦の仕方に問題があるようなので
至急再検討するようにします。
部門別損益管理を行っている企業では、
大抵このようなやり方で「共通費の配賦」を行なっています。
ここで重要なのは、
配賦の仕方が問題なのではなくて、
「配賦そのものが問題」だ
ということです。
配賦をすると、経営の実態がわからなくなってしまいます。
配賦はしてはいけません。
本社経費を部門に負担させることは、
管理会計の世界ではあたりまえです。
しかし、「経営の意思決定にほんとうに役に立つのか」となると、
話は別です。
■MQ会計を使って部門別損益管理を行う場合、
重要になるのが各部門や組織ごとの粗利MQと利益Gです。
共通費を配賦すると、
経営の実態が見えなくなってしまいます。
売上高基準で【配賦する】ということは
その月の売上が確定しないと配賦額がわからない
のです。
じつはここが最大の問題点であることに
多くの会計人、経理マンは気が付いていません。
これでは、利益目標も経費の計画も立てられない!
ということを意味します。
■配賦基準の決め方によって
部門ごとの利益Gは変わってしまいます。
これではまさに、
製造業における製品の原価計算と一緒です。
配賦をするということは、
イコール恣意的(しいてき)ということであり、
先々の経営を考えた場合にはほとんど役に立たない
のです。
配賦をしない状態がその部門の実態です。
本来はこの状態で経営の意思決定の資料に使うべきなのですが、
どうしても配賦をしたいという経理部長のために提案です。
本部(本社)がマネジメント部門になって
毎月、各部門から一定額の費用を負担してもらいます。
【一定額】であるところがポイントです。
経理処理、請求書発行や給与計算などの事務処理費用、
そして経営陣のマネジメントや管理費用です。
「会計事務所に支払う毎月の費用」と考えれば
わかりやすいと思います。
■各部門で、あらかじめ決められた金額を費用にすることで
毎月の配賦額に振り回されずに
計画を立てることができるようなります。
各部門では費用になるのでその分利益は減ることになります。
では本部(本社)ではどうなるかというと、
それは本部の売上です。
毎月、各部門から徴収するマネジメントや事務処理の料金が
本部のPQです。
ただし、各部門のFや本部のPQは、
実際には存在しない架空の内部取引なので
全体の試算表(決算書)を作成する場合には、
なかったことにしなければなりません。
これらはすべて【仕訳】を使って行います。
MQ会計では、けっして配賦は勧めませんが、
どうしても、という社長さんは、ぜひお試しください。
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