【管理会計を学んでその先どうする?】
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■□ 戦略MQ会計・DC・マトリックス会計
■□ 社長のための会計学 【 マトリックス通信 】
■■ Vol.359 2014/10/17
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■MQ会計を知らないある税理士と経営指導の話題になったき、
聞いてみました。
☆売上高が1000万円、変動費が600万円、利益が100万円の会社があります。
この会社の売上が10%下がったら利益はいくらになると思いますか?
彼の答えは「60万円」でした。この答えはもちろん間違いです。
そして私にこう言いました。
「それは、ひっかけ問題ですね」
・
マトリックス通信【臨時号】に掲載した記事です。
読者の方から質問が来ました。
★私も60万円だと思いました。
損益分岐点の公式が身についてしまっています。
なぜ、60万円が誤りなのでしょうか。
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■管理会計を学ぶなかで損益分岐点分析の話が出てきます。
では、この問題を管理会計で解くとどうなるか?
与えられた情報は次の3つです。
○売上高は1000万円
○変動費は600万円
○利益が100万円
ここで気づくことがあります。
売上高、変動費、利益、
これらの単語は【専門用語(会計用語)】だということです。
ですから、管理会計を学んだことがない人にとっては
この問題の意味がわかりませんし、解けません。
そこで「変動費とは何か?」を調べてみると、
「売上高に比例して増減する費用。
売上高が増えればそれに伴って増え、
売上がゼロであればまったくかからない費用で、
たとえば、商品仕入れや原材料仕入れなどがある。」
さらには、
「損益分岐点分析を行うためには、
費用を変動費と固定費に分ける必要がある。
固定費は売上高に関係なく一定に発生する費用で、
社員の給料や家賃、リース料などがある。」
■では、先ほどの問題です。
☆売上高が1000万円、変動費が600万円、利益が100万円の会社があります。
この会社の売上が10%下がったら利益はいくらになると思いますか?
管理会計を学んだ方であれば、必ず解いた経験があるはず、
そして「限界利益」という用語が出てきます。
「限界利益は、売上高から変動費を差し引いたもの」
では、管理会計の説明にしたがって、この問題を解いてみましょう。
・売上高は1000万円、変動費は600万円
したがって限界利益は400万円(限界利益=売上高-変動費)
・利益は限界利益から固定費を差し引いたもの(利益=限界利益-固定費)
利益が100万円ということは、
この会社の固定費は300万円(固定費=限界利益-利益)
・この会社の売上高が10%減少し900万円になった
・変動費も売上高に比例して10%減少し540万円、
限界利益は差し引き360万円(売上高900万円-変動費540万円)
・固定費は、売上高の増減には影響しないため300万円のまま
・したがって求める利益は60万円(限界利益360万円-固定費300万円)
<変動損益計算書>
売上高 900万円(100%)
変動費 540万円(60%:変動費率)
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限界利益 360万円(40%:限界利益率)
固定費 300万円
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利 益 60万円
■管理会計で学ぶ損益分岐点売上高の公式は
損益分岐売上高 =(固定費÷(1-変動費÷売上高)
では、売上高が1割減った状態での損益分岐売上高を、
この公式に当てはめて計算してみましょう。
(固定費300万円÷(1-変動費540万円÷売上高900万円)
この公式から導かれる答えは[750万円]です。
そして、
「損益分岐点比率は、損益分岐点売上高を現在の売上高で割った比率である」
と書いてあります。
<損益分岐点比率>
・900万円の売上のときは83.3%(750万円÷900万円×100)
・1000万円のときは75%(750万円÷1000万円×100)
ちなみに「経営安全率」を計算すると次のようになります。
・900万円の売上のときは17.7%
・1000万円のときは25%
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■では、なぜこの問題の答え[60万円]が誤りなのでしょうか?
それは、
・変動費、固定費の定義が科学的、数学的根拠にもとづいていないから
・科学的、数学的な裏付けのない理論は、
現実の経営や未来のシミュレーションに使えないから
です。
「管理会計における変動費の定義は、売上高に比例する費用」
売上高とは、単価と数量を掛けあわせた結果です。
単価に比例するのか、それとも数量に比例するのか、
しかし、単価と数量の間には相関関係はありません。
「売上高に比例」という定義自体が科学的、数学的とは言えないのです。
その点、MQ会計は科学です。数学です。(ただし中学校1年程度)
管理会計では、売上高がちょうど750万円のときに利益はゼロになりますが、
MQ会計を使ってシミュレーションしてみると、
売上高が750万円のときは、利益がゼロになる場合もあるし、
みごとに赤字になってしまう場合もあるのです。
MQ会計には「損益分岐点売上高」というのは存在しません。
それは、売上高が「単価と数量」という2つの要素から
成り立っているからです。
売上高を単価と数量に分解して考えるからです。
MQ会計は【要素法】です。
ですから、損益分岐点は4つあります。
※)詳しくは『利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)』をご覧ください。
※)管理会計の一部の解説で「変動費は生産数量や操業度に比例する」
という記述がありますが、MQ会計では成立しません。
■変動費と固定費という用語が、儲けの構造(利益を生み出す構造)を
わかりにくくしていると、常々考えています。
では、何のために損益分岐点分析を行うのでしょうか。
損益分岐点売上高を計算し、分析してその先どう活用するのでしょうか。
多くの解説書を見ると、「損益分岐点売上高は低いほうがいい」と
書かれています。
損益分岐点比率を下げるには、
・変動費率を下げる(限界利益率を上げる)
・固定費を減らす
管理会計における損益分岐点分析はこれが限界です。
利益を増やすには、
・売上を増やす
・利益率を上げる(原価率を下げる)
・固定費を減らす
このレベルの話と何も変わりません。
どちらにも共通するのは「損益計算書から抜けられない」、
「会計の枠のなかでのみ考えている」という点です。
もし、あなたが社長だったら、
依頼している税理士に、ぜひこの問題を出してみてください。
100人中99人が[60万円]と答えるはずです。
そして、
60万円と答える税理士から経営指導を受けている社長は気の毒です。
もし、それ以外の答えを言う税理士がいたら、、、
本物かもしれませんよ。
※)MQ会計における「f/m比率」は、
管理会計における「損益分岐点比率」とは大きく異なります。
ソフトバンクの孫さんが「経営はf/m比率!」と言ったように
経営のなかでもっとも重要な比率かもしれません。
機会があれば、このメルマガで紹介したいと思います。
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