【続・「会計ソフトの役割」について考える】
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□■ 戦略MQ会計・DC・マトリックス会計
■□ 社長のための会計学【 マトリックス通信 】
□■ Vol.457 2018/03/07
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■会計ソフトの役割についての続編です。
会計ソフトの大きな役割の一つは、
経理事務に手間ひまをかけないため、です。
事務処理を楽にするため、です。
「会計ソフト」とは「事務処理ソフト」です。
ですから、手書きで帳簿をつけていたときのやり方が、
そのままソフト(プログラム)のなかで行われています。
パソコンになっても、会計帳簿のつけ方の基本のとおりに
ソフトが組まれているわけです。
会計ソフトのメーカはたくさん存在しますが、
税務申告が目的であれば、
どのメーカーのソフトでも機能は十分に備わっています。
日々企業側で発生する取引を会計ソフトに入力しさえすれば、
税務申告に必要な帳表や資料は、自動的に作成されるからです。
「転記作業」
「分類集計作業」
会計ソフトに期待できるのはこの部分です。
・
会計ソフトが世のなかに出はじめたころ、
おそらく30年以上前のことだと思いますが、
NHKの番組で「会計ソフト」の特集をしていました。
そのなかで会計ソフトの便利さと問題点が挙げられました。
これまで簿記の技術をマスターしないと決算書が作れなかったのが
これからは、誰にでも会計処理ができるというものです。
便利さの反面、番組で問題として取り上げられていたのが、
「過去に遡って(さかのぼって)データを自由自在に直せる」
でした。
「会計ソフトを入れることで、利益をいくらでも調整(操作)できる、
つまり、脱税につながらないか」
というものです。
・
私は、当時すでに会計に従事していましたから、
興味をもってその番組を見ていました。
「いずれそんな時代が来るんだ」
まさにひとごとです。
なにせ会計の現場では、手書きで帳簿をつけるのが常識の時代。
遡って直すなどという発想はありません。
ところがその後、パソコンが普及し始めると、
会計の現場にもその波があっという間に押し寄せてきます。
そして、遡って直せるのが当たりまえの時代になったのです。
■今回は、この「過去に遡って直す」ということについて、
税務と経営、それぞれの観点から考えてみたいと思います。
会計ソフトに関係なく、そもそも企業が会計帳簿を作成する目的は、
「法律で決められているから」です。
年一回の税務申告だけを考えれば、
「遡って修正できるソフト」は、経理業務には適しませんし、
会計の慣習では、帳簿はけっして遡って修正してはいけないのです。
ですから、間違いを発見した場合には、
その月に訂正伝票を起票し、対応しなければなりません。
会計に携わる人たちにとって、それはいまでも【常識】です。
「先月の売上を計上する際に誤って百万円少なく集計してしまった。」
という場合、税理士は、あるいは会社の経理は、
どのように処理するでしょうか?
会計ソフトを、税務申告だけに使うのであれば、
誤りを”発見した月”に訂正すれば済みます。
ところが、
ところがです。
もし、あなたの会社で、会計ソフトに入力したデータを
経営に使っているのであれば、
話は違ってきます。
■私が考える会計情報への期待のひとつは、
【警戒警報】としての役割です。
けっして会計ソフトへの期待ではありません。
社長方がもし、会計情報を経営に活用するのであれば、
会計ソフトから出力される決算書などの帳表類よりも、
そこに蓄積された会計データや情報をどのように活用するのかに着目し、
★蓄積される「データの質を上げていくこと」★
会計ソフトの使い方ではなく「データの活用の仕方」の話です。
税理士もコンサルタントも、ここを誤れば、
決算書の解説や帳表の分析に終始することになってしまいます。
『経営に対する警戒警報としての会計の役割』
★これは重要★
経営の危機を知らせる情報が、
本来、会計システム(会計ソフトではない)のなかに備わっているのですが、
具体的にどのように活用するのか、という話にはなかなかなりません。
これをきちんと説明し指導できる税理士はごく少数、
会計情報を経営に活用するうえで、とても大切なことです。
(つづく)