【月次決算とMQ会計】
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□■ 戦略MQ会計・DC・マトリックス会計
■□ 社長のための会計学【 マトリックス通信 】
□■ Vol.458 2018/03/26
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■今回は、会計ソフトから出力される「月次決算書」について考えます。
30年以上前の話になりますが、
私がまだ会計事務所で働いていたころ、
月次決算書(月次試算表)を作って企業へ届けるのが主な仕事でした。
ある会社を訪問すると、すでに送った月次決算書が、
封も切らずに片隅に積み上げてあります。
税務と会計の技術を駆使して【制作した】月次決算書に、
「なぜ社長は、興味を示さないのだろうか」
正直、ガッカリです。
当時はまだエクセルすらありません。
マーカーペンで重要なところに印を付けたり、
赤枠で囲んだり、コメントを書いたり、勉強会を開いたり、、、
いろいろ工夫はするのですが、反応は芳しくありません。
むなしい・・・
やる気をなくす・・・
とはこのことです。
せっかく一生懸命メッセージを伝えようとしているのに、
社長は何を考えているんだ!見ないあなたが悪い!
という状況です。
「興味をもってもらうためには、どうすればいいのだろうか」
今度は経営分析だ!
管理会計だ!
資金繰りが重要だ!
いや、やはり経営計画を作らなければならない!
そのときは、懸命に仕事をしていたのですが、
いま思い返せば、
けっして社長のためにやっていたのではなく、
事務所の「自己満足」のためだったのです。
毎月、顧問料を貰うための理由付けだったのです。
・
時が流れ、いまはエクセルなどさまざまなツールが出回っていて、
状況は一変しました。
会計ソフトの質も操作性も格段に向上。
しかし、月次決算の考え方は、変りません。
出力される帳表(結果)も中身は同じです。
そもそも「月次決算」とは何なのでしょうか?
社長方がこれを経営の指標として使うために、
税理士やコンサルタントは、どう活用していけばいいのでしょうか。
MQ会計の研究をはじめてからの、私の長年のテーマでした。
・
現在は、定期的にMQ会計セミナーを開催しています。
税理士、コンサルタントの方々の参加割合が多いのですが、
30年前に私が悩んでいたことと同じようなことに突き当たっている
ことが伝わってくるのです。
■そもそも「月次決算」ということばが世に生まれたのは
会計ソフトの出現、
経理処理をコンピューターで行うようになってからです。
それまでは「月次決算」という概念すらありませんでした。
【月次決算】をネットで検索すると、
税理士事務所やコンサルタントのサイトが「どーっ」と出てきます。
そこには月次決算の具体的なやり方が書いてあります。
・減価償却費の月割り計上
・引当金、未経過勘定の処理
・仮勘定(仮払金・仮受金)の整理
・主要な科目(現金預金・売掛金・買掛金など)の残高照合
・実地棚卸
そして、
「スピードが命」
月末で締めたら「さっさと出せ!」です。
では、
「何のために行うのですか?」
というところで、「経営」という単語が登場します。
・月次決算を「経営改善や業務改善」に活用しよう
・月次決算は経営にとって重要
・節税対策にも有効 = 資金繰り対策
・タイムリーに現状を把握し、経営判断に活かす
・予算と比較し、原因分析や改善対策を行うことができる
どこのサイトも同じような文章が並んでいます。
会計の専門家としては当然です。
そして、月次決算の魅力のようなものが、Q&A形式で載っています。
そこには、こう書いていあります。
・
[Q]月次決算を「業績改善」に役立てるうえでのポイントを教えてください。
[A]業績を改善するためのポイントは以下の3つです。
1.売上高を増やす
2.限界利益率を上げる
3.固定費を減らす
この3つのポイントの変化を月次決算によってきちんと把握し、
「なぜだろう?」と自分自身に問いかけていけば、
業績改善のヒントがきっと見つけられるはずです。
■では、MQ会計に興味をもった社長が、
「月次決算書からMQ会計表を作ってみたい!」
と思いはじめたときに、
税理士やコンサルタントはどう対応すればいいのでしょうか。
・
それは、MQ会計であっても月次決算であっても変動損益計算書であっても
「一方的な分析や解説をしないでほしい!」
のです。
とくに税理士は日々会計に接しているので、
決算書の分析や変動費・固定費で作る変動損益計算書の見方や分析の手法から
なかなか抜け出せません。
せっかくMQ会計表を作っても、
これまでの税務会計や管理会計の延長になってしまいます。
「MQ会計」は、社長のための、未来を見るための【ツール】です。
MQ会計表を分析、説明、解説するとどうなるでしょうか?
Gを増やすには!
1.Pアップ
2.Vダウン
3.Qアップ
4.Fダウン
この4つの視点から経営を見ていかなければならない
と、こうなってしまいます。
そして、MQ会計でしかできない「利益感度分析」を
損益分岐点は4つある!
1.Pをあと5%アップすれば
2.Vをあと2.5%下げることができれば
3.Qは・・・
4.Fは・・・
のように【率】による分析や解説に走ってしまいます。
それはまさに「会計人の習性」としか言いようがありません。
「MQ会計で分析や解説や行う」ということは
結局、
1.売上高を増やす(売上をあと3%増やすだけで・・・)
2.限界利益率を上げる(限界利益率をたった1.5%改善するだけで・・・)
3.固定費を減らす(固定費を5%削減できれば・・・)
このレベルと同じことなのです。
次回は、
月次決算書からMQ会計表を作る場合の疑問や問題、
そして、分析や解説から抜け出すにはどうするか。
について書こうと思います。