【1人当り売上高】
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□■ Vol.514 2020/10/19
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■今回のテーマは「1人当り売上高」です。
「1人当り売上高」という指標は年間の売上を社員数で割ったもの。
簡単な数字で考えてみます。
[A社では]
◎前期売上高は1億円、当期売上高は1.5億円、対前年比150%
◎前期の社員数は10名、当期は20名
前期:1人当り売上高1000万円
当期:1人当り売上高750万円
[B社では]
◎前期売上高は1億円、当期売上高は0.9億円、対前年比90%
◎前期の社員数は10名、当期は8名
前期:1人当り売上高1000万円
当期:1人当り売上高1125万円
この2つの会社をどう分析しますか?
という質問です。
「これだけの情報じゃわからないよ!」
たしかに、これだけではわかりません。
■では経常利益の情報を追加してみます。
[A社]
◎前期の経常利益は500万円、当期は700万円
前期:1人当り経常利益50万円(500万円÷10名)
当期:1人当り経常利益35万円(700万円÷20名)
[B社]
◎前期の経常利益は500万円、当期は600万円
前期:1人当り経常利益50万円(500万円÷10名)
当期:1人当り経常利益75万円(600万円÷8名)
両社の情報を整理すると
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[A社]
当期:当期売上高1.5億円
当期:経常利益700万円
当期:社員数20名
前期:売上高1億円
前期:経常利益500万円
前期:社員数10名
[A社1人当り]
当期:1人当り売上高750万円 / 1人当り経常利益35万円
前期:1人当り売上高1000万円 / 1人当り経常利益50万円
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[B社]
当期:売上高0.9億円
当期:経常利益600万円
当期:社員数8名
前期:売上高1億円
前期:経常利益は500万円
前期:社員数10名
[B社1人当り]
当期:1人当り売上高1125万円 / 1人当り経常利益75万円
前期:1人当り売上高1000万円 / 1人当り経常利益50万円
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さていかがでしょうか?
「B社のほうが1人当りは多いが、全体の売上は減ってるし、、、
やはりこれだけの情報だけじゃわからないよ!」
たしかに、これでもわかりません。
・
じゃあ、これならどうだ!
ということで
情報を次々に加えていったものが経営分析の[生産性]に出てくる指標です。
・1人当り人件費
・1人当り付加価値
・1人当り総資本
・1人当り有形固定資産
さらに[収益性][安全性][成長性]の指標が並びます。
ここで疑問がわいてきます。
1人当り売上高は多いほうが良いの、少なくても問題ない?
1人当り人件費は、
1人当り経常利益は、、
1人当り付加価値は、、、
■話を変えます。
私は最初、会計とはまったく縁がない職種に就きました。
製品を作るための図面(設計図)を書く仕事です。
図面を書いている段階では製品はまだ未完成。
完成品を作るために全体やパーツごとに図面を作ります。
当時はドラフター(製図版と定規がセットになった製図用具)を使って
図面を書いていました。
100mの部材はは100分の1にすると1m。
大きなものは縮小しなければ1枚の用紙に収まりません。
縮小率をどうするかを考えます。
縮小率が決まれば全体や部分を縮小して図面に書き起こします。
建物なら大工さん、電気屋さん、設備屋さん、塗装屋さん、
内装屋さんごとに縮小が必要です。
・
その後会計の世界に入り経営指標を学び始めるのですが、
生産性分析に出てくる「1人当り売上高」を見たときに思いました。
「決算書の縮小だ!」
売上高、経常利益、付加価値、、、
分子は変化しても分母は変わりません。
社員数が100名の会社では決算書を100分の1に縮小することと同じ。
小学校の算数で習う「割合・分数」です。
・
では、生産性の指標ではなぜ「1人当り」にするのか、
という疑問がわいてきます。
生産性分析に、どうして「1人当り」が採用されるようになったのかは
わかりません。
が、メリットがあるはずです。
私が考えるには、分析ではなく「縮小(置き換え)」です。
売上高が50憶円といわれても多くの社員はピンときません。
少なくとも自分が所属している部署で考えられる範囲にしたほうがわかりやすい。
たとえば、
・年間売上よりも月の売上や粗利、
・週単位の売上や粗利、
・日々の売上や粗利、
・曜日ごとの売上や粗利
・時間帯の売上や粗利
ほかにも
・分類ごとの売上や粗利
・業務で扱う単位当りの売上や粗利
で表すと現場の社員にとっては身近になり、
伝統的な分析手法に固執しない「○○当り」の使い道が見えてきます。
あらたな発想や展開につながる可能性もあります。
■ある経営分析の本を読んで気になった(疑問に思った)記述がありました。
●1人当たり売上高とは売上高を基本にした指標で、
会社の経営活動を総合的に分析するために必要な指標です。
この数値が高ければ高いほど労働力の面で効率的な経営が
なされているといえます。
「1人当たり売上高」は生産効率の中でも一番読みやすい財務分析指標です。
さらに続きます。
●1人当り売上高は、社員1人が年間でどれくらい売上を獲得したか。
1人当り生産性は、社員1人が年間でどれだけ利益を出したか。
これらの指標が前期に比べて上がったのか、それとも下がったのか。
●売上や利益の増減とあわせて人員数の増減も加味した生産性が大事です。
これからの時代、経営における重要な要素の一つが“生産性”なのです。
「1人当りの生産性=1人当りの利益」
・
この本の著者は「1人当りの利益」を重要視しているようです。
では「生産性」とは何なのでしょうか?
検索すると、「生産性とは、産出高の投入高に対する割合」と出てきます。
産出高とは何なのか、これに対して投入高は何なのか、
この定義を誤ると使えない指標になってしまいます。
この本の著者が言っているのは
・産出高=利益(営業利益あるいは経常利益)
・投入高=社員の人数
残念ながらこの指標からは生産性の本質にはたどり着けません。
そこでまた疑問が生まれます。
決算書から企業の生産性を測ることがほんとうにできるのだろうか?
決算書でしか測れない生産性は存在するのだろうか?
・
この原稿を書きながら思いました。
「社員数が100名の会社では決算書を100分の1に縮小することと同じ」
私は、図面を書いていた経験から「縮小」をイメージしましたが、
さらに細かく掘り下げるという点で「拡大」と感じる方もいると思います。
「決算書を会計と異なる視点でとらえる」ことは、
あらたな発想につながる可能性を秘めています。
(つづく)
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