Vol.521 MQ会計とB/S経営

いつごろだったか、
「B/S経営」という単語が使われていたような記憶がある。
ネットで調べてみた。
予想したとおり、会計(決算書)に関する内容だ。
 
「P/Lはわかりやすいが
 B/Sを読める経営者は少ない」
 
「P/Lは単年度の利益で考えるが 
 B/Sでは長期的な利益(ROEなど)が重要だ」と書いてある。
 
「とくにB/Sを意識して経営をする」ということを言いたいらしい。
が、会計の話が主になっていて結論はよくわからない。
 
「3年先のB/Sを意識しながら経営計画を作る」
という本を眺めたことがある。作るには会計の専門知識が必要だ。
 
借入金の返済予定、設備計画などの情報に加え、
運転資金(受取手形・売掛金・在庫・支払手形・買掛金)については、
売上高回転率などの指標を使うことになるため、
専門家であっても難しい。
 
けっきょくは専用のソフトを使うことになるのだが、
できあがった計画B/Sをどのように実践で活用していくのか疑問だ。
銀行に出すためだけの資料になってしまうのではないか。
 
マトリックス会計なら
多少の訓練で作れるようになるのだが、、、
 
                ・
 
MQ会計は「損益をどうするか」に
焦点をおいているように見られがちだが、
じつはそうではない。
 
MQやMGは、
とくにB/Sを意識しなくてもB/Sの感覚が身につくようになる。
けっしてB/Sを中心に考えるということではない。
結果的に、
B/Sで考えられるようになる、のだ。
 
会計や決算書が前面に出てくると、
会計の枠の中だけで考えてしまうと、
どうしても経営の主軸から外れていってしまう。
だからMQ会計では会計用語や専門用語を使わない。
 
社長が日々経営について考えているときの思考過程を
そのまま当てはめたほうがわかりやすいし、その感覚が重要だ。
 
要するに、
 
B/S経営=B/S(決算書)で考える
 
ということとは違う、のだ。
 
日々の経営を考えるときに
「会計(決算書)に翻訳しなければ使えない」
「会計用語をマスターしないと使えない」
のであれば、とても使う気にはならない。
 
「B/Sの感覚を身につける」とは、
「MGの会社盤に置き換えて経営を考える訓練をすること」
 
つまり、「B/S経営」というコトバを知らなくても、
会計(決算書)を使わなくても
自然にB/Sを意識するようになっていくのがMQ、MG。
 
決算書のB/Sを学んでも
この感覚を掴むことはできない。
 
これは会計を専門的に学び
会計業務に携わっている人たち、
たとえば会計人や銀行マン、経理マンにもそのまま当てはまる。
 
MQ会計とともに意識してもらいたいのが、
これから話す内容だ。
 
決算書のB/Sの話ではない。
 
               ・
 
「新型コロナ」を例に考えてみる。
 
ニュースや新聞では
毎日情報が発表される。
 
・今日の陽性者数
・今日までの陽性者の累計数
・今日現在の重症者数
・今日の死亡者数
・今日までの死亡者の累計数
 
そのほかにも病床使用率や人口10万人当りの陽性者数、
1週間の移動平均、実効再生産数など。
 
今回、山形市のコロナ感染症に関するホームページを
じっくりと見てみた。
現在入院している患者数や自宅待機人数が発表されている。
 
陽性者数と死亡者数については、
その日発生した人数とこれまでの累計が表示されている。
入院患者数については、累計入院者数ではなく、
現在の入院者数が書かれている。
 
私が気になるのは、
 
「いま市中に、入院や自宅待機を含めて何人の陽性者数がいるのか」
 
これを求めるには
治った人たちを差し引かなければならない。
 
累計感染者数も死亡者数も、
当りまえだが増える一方でけっして減ることはない。
 
私のMGに参加された方は、
「ある中学校の図書室」の話を思い出してほしい。
B/Sを意識していくうえでの基本、出発点になる。
 
               ・ 
 
この状況を決算書(会計)に当てはめてみると、
陽性者数と死亡者数はP/L、入院患者数はB/S。
 
P/Lは勘定科目ごとに累計で考える。
そして累計する期間は1年である。
 
これに対しB/Sは累計しない。
 
陽性者数と死亡者数はP/Lのやり方で計算し、
入院患者はB/Sで計算していることになる。
 
つまり、
 
新型コロナの発生時から現時点までの「決算書」が作れる。
 
が、肝心な私の欲しい情報はこの決算書には載っていない。
 
P/Lは年に一度リセットし、また0から累計を始めるが
新型コロナではリセットはしない。
永久に累計計算を続けることになる。
 
会計に例えると、
会社設立からの売上高を累計しているのと一緒だ。
 
会社設立以来の売上累計が「100兆円を超えました」と言われても
「だからどうなの!」と思ってしまう。
 
感染者数は1年単位で累計計算を行うことはもちろんできる。
月別の発生人数も当然わかるので
前年対比や増加率を計算し分析する。
 
まさに損益計算書の月次・年次対比と同じだ。
 
「MQ会計もP/Lと同様に、
 Q・PQ・VQ・MQ・F・Gは累計だ。
 翌期首には0にリセットされ、また累計が始まる。」
 
と思ったとたんに「ただの会計」に戻ってしまう。
 
会計では「決算期で区切る」のは当りまえだが、
MQでは決算期で区切ることには、あえてこだわらない。
 
決算期で区切ってしまうと、
見えなくなる情報も存在する。
 
だからこそB/S感覚が必要だ。
次回はこのことについて書こうと思います。
 

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【発行元】株式会社アイティーエス 
【発行責任者】宇野 寛
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