利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)
の著者が伝える「マトリックス会計講座」
制度会計や税務会計が、なぜ経営の役に立っていないのかというと、「専門的で難しい」を通り越して、決算書になった時点で「損益(P/L)、資金(C/S)、財務状況(B/S)」における相互の関連性がまったくなくなってしまうからです。したがって決算書から経営の情報を読みとることが非常に難しくなっています。
計画を立てる場合、損益レベルでは比較的容易に考えることができます。収益(売上)と費用(経費)を決めれば差額が利益になるからです。しかし、問題はその先にあります。期中の資金繰りがどうなるのかは、まったく別の問題だからです。
自社のB/S(貸借対照表)を見たとき、「なぜこのようになったのか」の途中経過が見えなければなりません。会計のように細かなところを追及するのではなく、企業全体を見通せる帳表が必要になります。
決算書の中でも比較的理解し易いのが損益計算書です。営業活動の結果、最終利益がどうなったかを表した帳表です。しかし社長にとって必要なのは、「この先どうする? 明日からどうする!」の情報です。
この損益計算書をこの先の経営戦略に使えて、なおかつ誰にでもわかりやすくしたのがMQ会計表です。MQ会計表は、MG(MQ戦略ゲーム)の開発者である西順一郎氏によって昭和46年から56年にかけて考案されました。
MQ会計とは、直接原価計算・付加価値会計を統合し、リニアプログラミング(線型計画法)を加味して、やさしく簡単に、正しく戦略的に、経営者が意思決定できるようにしたものです。(利益最大化の科学)
現在の簿記会計はフロー(流れ)を重視しません。残高や損益を出すための途中経過としか考えていないのです。したがって、毎月作成される合計残高試算表からは残高の結果情報しか得られません。
制度会計自体が残高重視の対外報告を主とした【過去会計】であり、場合によっては‘死亡診断書'といわれるゆえんです。
企業経営では通常、利益と資金は一致しません。利益は出ているのに資金繰りが大変だということはよくあることです。つまり現金、支払能力、利益の三つの流れを、常に考えていかなければなりません。
現在の会計システムのもとでは、資金繰り表、貸借対照表、損益計算書が別々に出力されるため、相互の関係をトータルにつかみ取ることは非常にむずかしいと言えます。
財務会計ソフトか何かのたんなる名称、呼称だと思われる方も多いと思いますが、マトリックス会計の歴史は古く、MG(マネジメントゲーム、現在はMQ戦略ゲーム)が誕生した1976年(昭和51年)に、MGの決算システムとして考案されたものです。
MG・マトリックス会計の開発者は西順一郎先生で「マトリックス会計」の命名者でもあります。マトリックス会計の原型となった「行列簿記」は、故、越村信三郎先生の考案によるものです。
マトリックス会計のすばらしさは、じつにシンプルにして明快なことです。たった一枚のシートで企業全体の動きや現状がまさに手にとるように把握できるのです。これこそ会計を超えた社長(操縦者)のための管理ツールです。決算書を前にしてもう悩む必要はありません。
企業で使われている勘定科目の数は200科目から300科目に及びます。マトリックス会計では、これらを約30に分類し、金額についても上位5桁前後で切り捨てています。全体をマクロにとらえ経営者の意思決定を重視しているためです。
書店には「決算書の読み方」の類の本がたくさん並んでいますが、実際に決算をやったことのない人が一生懸命期末の決算書を見ても、その仕組みを理解するのに精一杯で、その先の活用まではなかなか・・・というのが現実ではないでしょうか。決算書の説明を聞いて、わかったような、わからないような気分で、ただながめて終わってしまう・・・
損益計算書(P/L)、 貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/S)、
決算書はこの三表からできていますが、それぞれの関係が会計をわかりにくくしています。その点マトリックス会計では、企業活動の結果がB/S・P/L・C/Sにどのように反映されたかがわかるようになり、それだけでも経営と会計がリンクできるようになります。「借方・貸方」が素人にとって経理をわかりにくくしている最大の要因なのですが、マトリックス会計の世界ではたんなる「タテヨコ」の合計表なのです。
今の制度会計から作成される決算書は一次元の世界です。つまり、それぞれ作成された貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/S)から相互の関係を読みとることは、会計を専門的に勉強した人でも難しいのです。ところがこの三表をマトリックス会計表に表わした途端にたった一枚の紙となり、二次元の世界になってしまいます。
二次元の世界の方が一次元の世界よりも情報量が多いため、とても簡単でわかり易くなります。さらには会計の知識がほとんどなくても活用できるようになるのです。もちろん会計の知識はあったに越したことはありません。
我々は今、三次元の世界に存在しています。四次元の世界を想像しようとしてもなかなかできません。しかし、もし四次元にいる人(かりに宇宙人?)から見れば、三次元の世界はなんと分かりにくく、暮らしにくい世界だと感じているかもしれません。四次元の世界こそが、今我々がいる三次元からみたマトリックス会計の世界なのです。
「なあーんだ。決算書ってこういう仕組みだったのか!」
と言えるようになるかもしれませんね。