特別賞与と製造原価

特別賞与を原価に算入すると税金が高くなる

前回から、製造業の原価について検証しています。

税法が製造業に要求しているのは、期中における原価計算そのものではなく、

「期末に残った製品や仕掛品などの棚卸資産の合計金額はいくらか」です。

そしてそれは次に掲げる(イ)と(ロ)の合計です。


 イ 当該資産の製造等のために要した原材料費、労務費及び経費の額

 ロ 当該資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額

 

ここで疑問が生じます。


 ○ 労務費はどこまで原価に入れなければならないのか

 ○ 製造に関する経費はどこまで含まれるのか


税法では、労務費や経費に【含めなくていいもの】を挙げています。

たとえば労務費です。

 

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 法人税法基本通達 5-1-4 【抜粋】

 (製造原価に算入しないことができる費用)

 次に掲げるような費用の額は、製造原価に算入しないことができる。

 

  (1)使用人等に支給した賞与のうち、例えば創立何周年記念賞与のよう
   に特別に支給される賞与であることの明らかなものの額(通常賞与
   として支給される金額に相当する金額を除く。)

 

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日ごろから税務会計に携わっている人たちはこの意味を理解できますが、

税務会計になじみがない人がこの文章を読むと違和感を覚えます。


 〇 なぜわざわざ【しないことができる】と書かれているのか

 〇 すでに支払った費用を製造原価に入れるとどうなるのか


ではなぜ、あえて【算入しなくてもよい】と言っているのでしょうか。

それは、

特別賞与を原価に算入すると利益が【増える】からです。

利益が増えれば税金が【増える】からです。

 

 

ここで「特別に支給される賞与」について考えてみましょう。

予想以上に利益が出そうなので

期末に特別ボーナスとして合計で1000万円支給したとします。

製造業に該当しない会社では、賞与分1000万円は費用に計上されるため

その分利益が減ることになり、納める税金も少なくなります。


ところが、製造業になると話は別です。

それが先ほどの法人税法基本通達です。

この賞与が、この条文の「特別な賞与」に該当するのかしないのか、

そしてそれを会社が製造原価に入れるか入れないかで、

利益と税金が変わってしまうのです。


賞与を支給することで、たしかに利益は減りますが、

問題は、期末の製品と仕掛品の金額を計算する際に

「労務費に含めなければならないのか」あるいは「労務費に含めるのか」によって

税引前当期純利益が変わってしまうという点です。

 

かりにこの賞与を労務費に含めなければならない場合

期末に残った製品や仕掛品の棚卸金額に

支払った賞与の何割かを按分して加算することになります。


税法では製品別の原価計算を要求していません。

つまり、1000万円の賞与のうち何割かが製品と仕掛品に【配賦】され、

結局は期末の製品および仕掛品の棚卸の金額(評価額)が増えるのです。


かりに1割配賦されれば在庫の金額が100万円増え、

結果的に税引前の利益は100万円増えることになります。

もちろん税金も増えます。

 

配賦は結果です。

配賦率の計算根拠は企業によって違うし、原価計算担当者次第(※ で利

益が変わります。

この方法では、製品の原価は「終わってみないとわからない」のです。

 

MQ会計では配賦はしてはいけません。

配賦をすると実態がわからなくなってしまいます。


※)種類の異なる棚卸資産に共通して発生した付随費用や間接経費については、

  法人税法ではとくにその配賦方法を定めていません。
  実務では合理的な方法による按分計算で求めます。

 

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