決算書の解説や経営分析でよく使われる用語が「労働分配率」。
費用の中で多くを占める人件費は、企業の利益に大きく影響します。
では、労働分配率とはいったい何でしょうか。
次のような計算式で求めることができます。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100
労働分配率60%の企業では、100円の付加価値を稼ぐのに
60円の人件費がかかったという意味で、
付加価値に占める人件費の割合のことです。
ここで疑問が生じます。
「そもそも、付加価値って何?」
ネットで調べると山ほど出てきます。
(文献1)
企業が事業活動の結果として作られる製品、サービスなどを提供する過程で生み出されたもので、付け加えた価値のこと。付加価値の計算方法は、控除法と積上法の2つがある。
(文献2)
付加価値とは企業が新たに生み出した価値、付け加えた価値のこと。計算方法には何種類かあるが、代表的なものは控除法と加算法の2つ。控除法では、売上高から外部調達費用を差し引いて求める。メーカーであれば売上高から原材料費を引いた金額、商社なら売上高から仕入高を引いた金額になる。実務では、計算が容易なことから「加算法」が多く使われている。
(文献3)
付加価値とは、企業のヒト・モノ・カネを使って新たに生み出した価値。計算方法には、中小企業庁方式と日銀方式の2種類がある。
【中小企業庁方式】
付加価値=売上高-外部購入価値(材料費、購入部品費、運送費、外注費など)
【日銀方式】
付加価値=経常利益+人件費+貸借料+減価償却費+金融費用+租税公課
中小企業庁方式では、付加価値とは「差し引いたもの」、これに対し日銀方式では、付加価値は製造課程で「積み上げられたもの」。
中小企業庁方式では売上高から減算するのに対し、
日銀方式ではなぜ加算するのか。
調べるとほかにもいろいろ出てきます。
【経産省方式】
粗付加価値=実質金融費用+当期純利益+人件費+租税公課+減価償却費
【財務省方式】
付加価値=役員報酬+従業員給料手当+福利費+動産・不動産賃借料
+支払利息割引料+営業利益+租税公課
では、税理士が決算書の解説で使う労働分配率における付加価値は、
いずれの方式で求めた金額なのでしょうか。
控除法なのか、加算(積上げ)法なのか。
日銀方式なのか、中小企業庁方式なのか、それ以外なのか。
付加価値の定義によって労働分配率の値が変わってしまうのです。
ここに、10人の税理士やコンサルタントがいるとすると、
もし、同じ決算書をもとに労働分配率を計算した場合、
出てくる答えは全部違うはずです。
これでは、この先の経営に使えるはずがありません。