ここは、職員が50名ほどいる大きな会計事務所です。
ある日、A君が所長室に呼ばれました。
「うちの事務所でも営業部隊を作ることにした。
そこでA君には来月からそっちを担当してほしい。」
「えっ、僕が営業ですか?
これまで担当してきたお客様はどうするんですか?」
「それは心配しなくていい。B君に任せることにしたから。」
「そんな、、、
急に言われても、、、
どうして僕が営業なんですか?
これまで営業なんかやったことがありませんし、、、」
「不満かね。
今、世の中の状況は知ってのとおり、
倒産や廃業をする企業が増えている。
うちのお客様もここ数年で1割近く減少した。
これまで営業なんかしなくても自然に売上は増えてきたが
これからはそうはいかない。
職員を減らすかお客を増やさないと
事務所自体の経営ができなくなる。
そこでお客様からの信頼も厚いA君に
営業部隊をまとめてほしいと思っている。
あとのスタッフはこれからだが、
来週まで考えておいてくれたまえ。」
「これは決定事項ですか?」
「そうだ、私の方針だ。」
「・・・」
A君は、これまで企業に出向いて 社長さん方と経営の話をし、
決算書の解説は、どちらかといえば得意なほうでした。
社長さん、企業がこの先、利益を出し続けるためには
売上を増やすか経費を削減するしか方法がないんですよ
A君はこれまでは「言う側の立場」でした。
ところが今度は「売上を増やす側の立場」、
「言われる立場」になるのです。
「売上を増やせ!」とは言ってはみたものの
「どうすればお客を増やせるのか?」など、
これまで真剣に考えたことはありませんでした。
A君に関するデータは次のとおりです。
○商業高校を卒業後、XX会計学院に入学した
○税理士を目指してこの会計事務所に入った
○営業の職に就こうなど、今まで本気で考えたこともない
○むしろ、営業が嫌いだから会計事務所を選んだ
○お客さまのために会計を勉強してきたわけではない
○独立しようという意識はなく
税理士の資格を持っていれば「地位」と「収入が増える」
○会計事務所で税務会計の知識や実務を身につけ
いずれは他の企業に「経理部長待遇」で再就職をしたいと思っている
企業は売上がないと成り立ちません。
そしてそこからは「利益と現金」を生み出し続けなければなりません。
もちろん会計事務所も同じです。
営業部隊がいるかどうかは別として、これまでは所長先生の役割でした。
税理士の資格をとっても独立しない人もたくさんいるなか、
会計事務所を構えている人たちは、自らの意志で【そうしたくて】
独立しています。
【税理士になる】のと【税理士事務所を構える】のとでは
天と地ほどの差があるのです。
もしかしたら、新規にお客様が増えたとしても
会計事務所の職員たちにとっては、素直に喜べないのかもしれません。
このお客は誰が担当するの?
給料が同じだったらこれ以上担当はしたくないな!
中小企業や小規模企業の社長たちは
毎日、売上や儲け、キャッシュを増やすために必死になって仕事をし、
考えています。
しかし、ほとんどの社長は税務会計が苦手です。
ですから高いお金を払って会計事務所に税務申告をお願いしているのです。
経営者のなかには
税理士先生を頼りにしている社長が少なくありません。
企業が良くなるための
企業がこの先、儲けていくための
企業が明日からどうすれば良いのかの
アドバイスを、真剣に求めている企業もあるのです。
決算書(過去)は分析や解説をするものではない
原価を下げても利益など増えない(机上の話)
会計的な発想(管理会計を含む)ではすぐに限界がくる
中小企業は何のために決算書を作るのかを、
税理士は、もう一度真剣に考えてほしいと思います。
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