すでにお読みになった方も多いと思いますが、
2009年1月に幻冬舎から出版された『テキトー税理士が会社を潰す』。
著者は税理士の山下明宏さんです。
「はじめに」には次のように書いてあります。
私は税理士である。
14年間にわたり、中小企業経営者と共にこの不況と戦い、
ほとんどの企業を黒字に導いてきた。
その経験を生かし、あなたの会社も黒字化する。
これが本書の狙いだ。
しかし、もうひとつ、大切な狙いがある。
世にはびこる、"テキトー税理士"たちを滅ぼすことだ。
彼らは、中小企業を食い物にし、破滅させる。
私は本書を、彼らへの挑戦状のつもりで書いた。
私は正しい税理士の姿を、中小企業経営者に伝えたい。
そしてあなたの力を借りたい。
この世から、中小企業に巣くうテキトー税理士を、
追放してもらいたいのだ。
そう、あなたはまだ、本当の税理士の姿を知らないのである。
さて、あなたの隣にいる税理士は、どちらだろうか。
テキトーか? それとも?
そして、本文へと続きます。
○例えば、ある企業が前年比125%の売上をたたき出したとしよう。
創業間もない若い会社には、このような急性長はよくあることだ。
しかし、たった1年で約25%も会社が大きくなったのである。
ほかの中小企業がバタバタと潰れているなか、
生き残っているだけでも立派なのに、売り上げ増。
すごい。素直にそう思えるケースだ。
○ところが、である。
売上げ増の一方で、人件費が前年対比135%まで増えていた。
これはおかしい。
この会社は、いわゆる"人が資本"の会社だ。
材料費がかさむわけでも、在庫が余るわけでもない。
設備投資も必要ない。だったら、人件費が増えた分以上に、
売上げが増えていないといけないのだ。
○しかし、人件費の伸びが、売上高の伸びを上回ってしまった。
これは、例えば従業員の数を増やしたぶん、
売上げが伸びたのはいいが、「期待した以上には」
伸びていないことを意味する。
ここに経営助言をする余地があるわけだ。
まさに、挑戦状をたたきつけられたかのような文章の連続です。
○第1章 中小企業を食い物にするテキトー税理士たち
○第2章 業績を伸ばすも落とすも税理士次第だ!
○第3章 税理士と筋肉質な企業をつくれ
ではこの本でいっている「テキトー税理士」とは
どのような税理士なのでしょうか。
43ページに次のようなことが書いてあります。
(3)たった5.6%のまともな税理士に出会う4つの方法
○なにせ目の前には、まともな税理士は、
税理士全体のわずか5.6%しかいない、という現実がある。
○ここで、まともな税理士の算出方法を紹介しておこう。
税理士が関与する企業は、全国で240万社
(国税庁の実績評価 平成19事務年度)。
そして、日本税理士連合会に登録している税理士は
7万1000人だ。これをもとに、税理士一人当たり33.8社の
関与先を持つと仮定する。
○一方、税務監査証明書を添付できている企業は13万6800社
(国税庁の実績評価 平成19事務年度)。
詳しくは後述するが、「税務監査証明書の添付」とは
まともな税理士の標準業務のひとつであり、
テキトー税理士には絶対に不可能なこと。
○では、まともな税理士が何名いれば、13万6800社すべてに
税務監査証明書を添付できるかどうか、というと4047名。
税理士7万1000人のうち、わずか5.6%、ということになる。
メルマガ「社長のための会計学【マトリックス通信】」で紹介したところ、
多くの方から感想のメールが届きました。
●(中小企業社長)
私は経営者です。この本はすでに読んでいました。
私が依頼している税理士にはない部分が、多数ありました。
こんな税理士もいるのか? と驚いた反面、
冒頭の次の部分についてはいかがなものか? 疑問に思います。
『私は税理士である。
14年間にわたり、中小企業経営者と共にこの不況と戦い、
ほとんどの企業を黒字に導いてきた。
その経験を生かし、あなたの会社も黒字化する。
これが本書の狙いだ。』
そして最後は「祈り」。黒字にするのは決して税理士ではありません。
私たち経営者の仕事です。
●(税理士)
この本に書かれている「テキトー税理士」という表現については、
「ちょっと言い過ぎ?」という感じはしますが、
これくらい言わないと分からないかな、という気もします。
ただ、TKCがあまりにも前面に出過ぎていて、
TKCシステムがいかにも「正義」という内容には賛同しかねます。
でも「なるほど」と思えるような部分も結構ありましたね。
経営者の皆さんが読まれたのであれば、
ご自身が依頼している税理士が「まともな方」なのかを
確認してみる良い機会かもしれません。
そのほかにもご意見をいただきました。
○TKCを前面に押し出し、手法を押しつける内容に幻滅。(税理士)
○税理士や会計士だけが読む本ではない。
企業経営者に向けた構成になっている。(中小企業社長)
○我々税理士業界に波紋を投げかける良いきっかけだ。(税理士)
○私だけが「正しい税理士」、他はみんな「テキトー税理士」。
TKCの税理士だけが「マットー」という内容に憤りを感じた。(税理士)
○この本は中小企業の社長が読むべき1冊。
お客である我々から税理士を教育しなければ
いつまでたっても「先生」なのかもしれません。(中小企業社長)
○税理士のこれからのあり方を考えるのに絶好の書だと感じた。(税理士)
予想外に多くの感想をいただき驚いています。
ご協力いただいた読者の皆さま、ありがとうございました。
私がこの本を読んで一番【おかしい】と思ったところは次の一節でした。
例えば、ある企業が前年比125%の売上をたたき出したとしよう。
創業間もない若い会社には、このような急性長はよくあることだ。
しかし、たった1年で約25%も会社が大きくなったのである。
・
売上げ増の一方で、人件費が前年対比135%まで増えていた。
これはおかしい。
この会社は、いわゆる"人が資本"の会社だ。
・
材料費がかさむわけでも、在庫が余るわけでもない。
設備投資も必要ない。だったら、人件費が増えた分以上に、
売上げが増えていないといけないのだ。
しかし、人件費の伸びが、売上高の伸びを上回ってしまった。
・
これは、例えば従業員の数を増やしたぶん、
売上げが伸びたのはいいが、「期待した以上には」
伸びていないことを意味する。
ここに経営助言をする余地があるわけだ。
これをまとめると
○売上高が前年比125%に対し人件費は135%増
○"人が資本"の会社では人件費が増えた分以上に
売上げが増えていないといけない
○これはおかしい
○ここに経営助言をする余地がある
おそらく、
これまで経験した過去の事例なのかもしれません。
では、「人が資本の会社」とはどんな会社なのでしょうか。
真っ先に思い浮かぶのが、「会計事務所」なのです。
事務所拡大のために先を見込んで人を採用した状況で、
人材投資や教育投資を積極的に行っている会計事務所が、
「これはおかしい!」といわれているのです。
もしかして、
これは、
前向きの税理士への挑戦なのかも、、、
と、思ってしまいます。
この著者は、所員の人件費を抑えて利益をだしているのかもしれません。
『あなたの会社も黒字化する。』と【堂々】と言っておきながら、
この事例には【金額】はまったく出てきません。
【比率】だけで経営を語っているのです。
比率重視の経営分析、経営助言は
税理士である以上
逃れられない【制約】なのかもしれません。
はたして、
この税理士が行う【経営助言】とは、
どんな内容だったのでしょうか。
一番知りたいこの部分の記述がないのがとても残念でした。
経営は【率】ではなく【額】であることを
もっと多くの税理士の方たちに分かって欲しいと思います。
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