利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)
の著者が伝える「戦略MQ会計講座」
あるスナックでのできごと。まだ30歳前後の若いママさん、話の端々にどうも経営者的感覚がありそう、と感じたのでさっそく聞いてみました。
「青ですか? 白ですか?」
青色申告か白色申告かという確定申告の話です。このママさん、税務申告は全部自分でやっているというので、メモ帳とペンを借りて四畳半の図を描いてみました。
「売上が100円だとしましょう。そうすると仕入れは10円ですね」と言って10分の1のところで仕入(売上原価)の線を描きました。そのとたん、
「えっ、どうしてわかるんですか?仕入はほんとうに10分の1なんです」
「そうすると残り90円は粗利ですよ。粗利ってわかりますか?」
「はい、わかります」
このママさんの頭の中では仕入と原価率、粗利と粗利率がきちんと整理されているのです。じゃあ80円の経費を使うと儲けは10円ですね。と言って経費と利益のエリアを書きました。これで、この店の四畳半の図ができたわけです。
この店でも売上は落ちているようです。
「それでは、売上が2割落ちたらどうなるでしょうか?」
と言って数字をそれぞれ書き換えます。
「売上は80円でしょ。そうすると仕入れは8円になりますね。
そしたら粗利は72円でしょ」
ママはその都度感心したようにうなずきます。
「売上が減っても、経費は店の家賃、電気水道ガス代、女の子の人件費など、
やっぱり80円かかるでしょ。そしたら8円の赤字になりますよね」
ママの顔は真剣そのもの。そして、
「えーっ、スゴイですね。すごくわかりやすい!」
と感激の連続です。
さすが将来の女社長、こういう感覚の人に四畳半の図を説明するとすぐにピンをきてくれます。「会計は図形で考える」ことがこの先、とても重要なポイントになってくるのです。
金額(円)を高さ(cm)に変えるだけで、会計が苦手な人でも理解しやすくなります。
これは単に、損益計算書を図形に置き換えただけですが、会計を「図形で表す」が理解への第一歩になります。
ではその続き・・・・・この店でも売上は落ちているというので、次の質問をしてみました。
「毎日の客数はつけてる?」
「はい」
「じゃあ客単価はわかるよね」
「はい。計算してます」
「客数は減ってる?」
「少しづつ減ってますね」
「客単価は?」
「落ちてます」
「ではママ、真っ先に何をすればいいと思いますか?」
そこでかえってきた答えは、
「客数を増やすことです!」
「売上を上げるということは、客数を増やすのか、客単価を上げるのか
そこをはっきりさせることが重要なんです。
税務署向けの決算書を見ただけではわからないんですよ。
客数が減っているのに売上を上げようとガンガン飲ませると、あとは来なくなるでしょ。
リピートのお客も含めて、客数をいかに増やすかの戦略が大事なんですね。
よくTVのドキュメント番組でやっているでしょ。
電話をかけまくったり、誕生日のプレゼントをしたり・・・・・」
もちろん新規開拓も重要です。しかしこれまで1カ月に1度しか来ない客をどうやって2回来てもらうか、2カ月に1度しか来なかった客を、どうやって1カ月に1回来てもらうか。
このママさんの戦略は正しいようです。