Vol.566 第2回・戦略MQ会計の3つのポイント


MQ会計に出会い真剣に研究をはじめたのが24年前、

当初の思い(原点)に立ち返ってみようと、

「利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)」を最初から読み直してみた。

初版は2009年12月、今年で15年が経過した。

この本は、当時私がやっていた「MQ会計基礎講座」がもとになっている。

なぜこの本が出版されるに至ったのか、

この本で何を言いたかったのか、

15年が経過した今だから伝えたいことなど連載してみたい。


MQ会計の3つのポイント

第2回は「第2章・戦略MQ会計のすすめ」からはじめようと思う。

重要なのは“考え方”、

それが70ページからの「2.戦略MQ会計の3つのポイント」に集約されている。

 

1.科学的

  科学的でなければ儲からない

2.戦略的

  戦略的な意思決定に使いたい

3.平易(中学一年程度)

  どんなにすぐれた理論でも、難しかったら役に立たないし、

  企業の組織全員が理解して動かないと利益アップはできません。

 

この3つのポイントはMQ会計の開発者、西順一郎先生の著書に出てくる。

西先生の思いがこの3つのポイントに凝縮されていて、

MQ会計の考え方・概念・土台そのものを表している。

会社に置き換えると方針や理念のような“基本姿勢”だと思っている。

 

管理会計の“CVP分析(注1”と比較されがちだが、中身はまったく異なる。

税理士たちが使っている「未来会計図表」や「変動損益計算書」と混同する人も多いが、

まったくの“ベツモノ”である。

 

MQ会計の研究途中で「複雑になってきたな、難しいな」と感じはじめたときは、

必ずこの原点(3つのポイント)に戻ることにしている。

MQ会計はシンプル、そして未来を見るための強力なツール、

けっして学問ではないのだ。

 

注1)CVP分析

Cost-Volume-Profit Analysis を略したもので

コスト(Cost)販売量(Volume)利益(Profit)それぞれの頭文字を取ったもの

費用を“変動費と固定費”に分解し損益分岐点分析を行う分析手法の一つ 


利益計画への応用(MQ会計で未来を見る)

利益計画は、この先の事業計画の基本的枠組みそのもの、出発点だ。

そしてMQ会計がもっとも力を発揮するのがこの“利益計画(注2”。

F(会社の生活費)は来年いくらかかるのか、かなり高い精度でつかむことができる。

したがって、翌期に稼がなければならない必要MQがわかる。 

 

 必要MQ = 翌期のF + 計画G

 

平均m率を使えば必要売上高PQも簡単に計算することができる。

 

社長たちが悩むのは、

この必要MQや必要PQを【どうやって稼ぎ出すか】だ。

 

利益計画とは、

「こうあらねばならない」という社長の決意表明であって、

「こうして利益をあげる」という手段ではない。

 

利益計画で決めた必要MQをどのようにして実現していくのか、

そのために必要なPQをどのようにして確保していくのか、

 

これが次の段階であり、

「こうして利益をあげる」

という具体的な計画が【販売計画(MQ計画)】である。

そしてこの販売計画(MQ計画)こそが

MQ会計のなかで“もっとも重要な部分”となるのだ。

 

販売計画(MQ計画)を作るためには“販売実績(MQ実績)”が必要だ。

 

ではここで質問。

決算書では前期の売上高は1,000、これに対して当期売上高は1,200。

前期と比較して2割増加である。

自身の会社の決算書だと思って、

社長であるあなたは、どう“感じる”だろうか?

 

1.喜ぶ

2.素直に喜べない

3.その他

 

さあ、あなたの頭の中で“どのような思考展開”が始まるか、

少しの間考えてみてほしい。

 

続きはこちらから(考えてから読んでみて)

https://www.mxpro.jp/vol-566-1/ 

              ・ 

経営計画の中で作られる利益計画(損益計画)は、

多くの場合「会計レベルで作られた計画」である。

「売上は前期の1.2倍」のような根拠がない計画が、いまだに蔓延している。

 

本来利益計画は、販売計画があってはじめて成り立つのだが、

会計や決算書から逃れられない会計人や中小企業診断士たちは、

昔のやり方、教科書に書いてある方法でしか作れない。

 

なぜ、計画売上を達成できなかったのか、

あるいは達成できたのか、

 

会計レベルで作った利益計画(損益計算書)からは、

原因を掘り下げることはできないのだ。

 

本来会議では、数字の検証だけでなく

その数字に至った“行動そのもの”を検証しなければならないはずである。

“前月の反省会”と“頑張りますの決起集会”になってはいないだろうか?

MQ計画(販売計画)は“行動計画”そのものなのである。

 

もうひとつ重要なこと、それは、

MQ計画(販売計画)は誰が作るのか、である。

ここで「MQ会計の3つのポイント」が再度登場する。 

 

「3.平易(中学一年程度)」に書かれている

「企業の組織全員が理解して動かないと利益アップはできません。」

 

MQ計画(販売計画)は、社長が決意表明した必要MQを

“社長と社長を補佐する社員”が一緒になって作らなければならない。

そしてでき上ったMQ計画は、社員全員が理解できなければならない。

 

利益計画で決めた必要MQをどのようにして実現していくのか

そのために必要なPQをどのようにして確保していくのか

 

だから「3.平易(中学一年程度)」が大事なのである。

それがMQ会計で未来を創造することにつながっていく。

 

MQ計画(販売計画)を作るためには、充分な時間を費やさなければならない。

作る時間、作成する過程そのものが重要であり、

作る工程において社長と社員の“○○力”が鍛えられるのである。

次回の「第3回・MQ会計で未来を見るために・・・」で解説しようと思う。

 

注2)利益計画

経営計画ではなく“利益計画”としたのは、MQ会計が“損益”だからである。

これを補完する役割が「マトリックス会計」。

MG研修をとおしてMQ会計をマトリックス会計に変換する方法を身につければ、

未来の資金繰り、未来のB/Sがわかるようになる。 


MQ会計で未来を見るためには・・・

会計の目的は「決算書を作るまで」である。

しかし世の中はいまだに「決算書がわかる=経営が良くなる」という思考だ。

決算書は会計のほんの一部分でしかない。

 

決算書や会計の情報は

経営に使えるものもあるし、逆に使ってはいけないものもある。

過去の分析をしたとろで社長の欲しいモノは得られないし、

決算書本にはこれらのことは一切書かれていない。

 

そもそも会計の役割は“カネ勘定”である。

“カネ儲け(経営)”と混同してはいけない。

MQ会計の3つのポイントの「1.科学的」と「2.戦略的」は、

会計や会計の延長線上にあるCVP分析に期待することはできない。

 

MQ会計では、なぜ未来を考えることができるのか。

それは3つのポイントの1番目、

「1.科学的(科学的でなければ儲からない)」によるところが大きい。

 

71ページには次のように書いた。

 

- この場合の科学的とは「数学的で矛盾がないこと」です。

  「数学的要素がどのくらい含まれているか」です。

  数学は答えが出るまでの過程がとても重要です。-

 

このときは“数学的”という表現で曖昧にしている。

“数学”と聞いただけで拒否反応を示す人が多かったからである。

 

もうひとつは「3.平易(中学一年程度)」についてである。

当時の私の研究レベルでは、

これらについて深く掘り下げて書く勇気がなかった。

 

この本は15年前の私の研究レベルで書いている。

その後、MQ会計を現場で実践していくうえで

事例や経験も増え、研究も進んだ。

               ・

 次回は「第3回・MQ会計で未来を見るために・・・」

「3.平易(中学一年程度)」について、

もう少し踏み込んでみようと思う。

 

(つづく)

 

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【発行元】株式会社アイティーエス 
【発行責任者】宇野 寛
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