MQ会計に出会い真剣に研究をはじめたのが24年前、
当初の思い(原点)に立ち返ってみようと、
「利益が見える戦略MQ会計(かんき出版)」を最初から読み直してみた。
初版は2009年12月、今年で15年が経過した。
この本は、当時私がやっていた「MQ会計基礎講座」がもとになっている。
なぜこの本が出版されるに至ったのか、
この本で何を言いたかったのか、
15年が経過した今だから伝えたいことなど連載してみたい。
MQ会計の3つのポイント
第2回は「第2章・戦略MQ会計のすすめ」からはじめようと思う。
重要なのは“考え方”、
それが70ページからの「2.戦略MQ会計の3つのポイント」に集約されている。
1.科学的
科学的でなければ儲からない
2.戦略的
戦略的な意思決定に使いたい
3.平易(中学一年程度)
どんなにすぐれた理論でも、難しかったら役に立たないし、
企業の組織全員が理解して動かないと利益アップはできません。
この3つのポイントはMQ会計の開発者、西順一郎先生の著書に出てくる。
西先生の思いがこの3つのポイントに凝縮されていて、
MQ会計の考え方・概念・土台そのものを表している。
会社に置き換えると方針や理念のような“基本姿勢”だと思っている。
管理会計の“CVP分析(注1”と比較されがちだが、中身はまったく異なる。
税理士たちが使っている「未来会計図表」や「変動損益計算書」と混同する人も多いが、
まったくの“ベツモノ”である。
MQ会計の研究途中で「複雑になってきたな、難しいな」と感じはじめたときは、
必ずこの原点(3つのポイント)に戻ることにしている。
MQ会計はシンプル、そして未来を見るための強力なツール、
けっして学問ではないのだ。
注1)CVP分析
Cost-Volume-Profit Analysis を略したもので
コスト(Cost)販売量(Volume)利益(Profit)それぞれの頭文字を取ったもの
費用を“変動費と固定費”に分解し損益分岐点分析を行う分析手法の一つ
利益計画への応用(MQ会計で未来を見る)
利益計画は、この先の事業計画の基本的枠組みそのもの、出発点だ。
そしてMQ会計がもっとも力を発揮するのがこの“利益計画(注2”。
F(会社の生活費)は来年いくらかかるのか、かなり高い精度でつかむことができる。
したがって、翌期に稼がなければならない必要MQがわかる。
必要MQ = 翌期のF + 計画G
平均m率を使えば必要売上高PQも簡単に計算することができる。
社長たちが悩むのは、
この必要MQや必要PQを【どうやって稼ぎ出すか】だ。
利益計画とは、
「こうあらねばならない」という社長の決意表明であって、
「こうして利益をあげる」という手段ではない。
利益計画で決めた必要MQをどのようにして実現していくのか、
そのために必要なPQをどのようにして確保していくのか、
これが次の段階であり、
「こうして利益をあげる」
という具体的な計画が【販売計画(MQ計画)】である。
そしてこの販売計画(MQ計画)こそが
MQ会計のなかで“もっとも重要な部分”となるのだ。
販売計画(MQ計画)を作るためには“販売実績(MQ実績)”が必要だ。
ではここで質問。
決算書では前期の売上高は1,000、これに対して当期売上高は1,200。
前期と比較して2割増加である。
自身の会社の決算書だと思って、
社長であるあなたは、どう“感じる”だろうか?
1.喜ぶ
2.素直に喜べない
3.その他
さあ、あなたの頭の中で“どのような思考展開”が始まるか、
少しの間考えてみてほしい。
続きはこちらから(考えてから読んでみて)
⇒ https://www.mxpro.jp/vol-566-1/
・
経営計画の中で作られる利益計画(損益計画)は、
多くの場合「会計レベルで作られた計画」である。
「売上は前期の1.2倍」のような根拠がない計画が、いまだに蔓延している。
本来利益計画は、販売計画があってはじめて成り立つのだが、
会計や決算書から逃れられない会計人や中小企業診断士たちは、
昔のやり方、教科書に書いてある方法でしか作れない。
なぜ、計画売上を達成できなかったのか、
あるいは達成できたのか、
会計レベルで作った利益計画(損益計算書)からは、
原因を掘り下げることはできないのだ。
本来会議では、数字の検証だけでなく
その数字に至った“行動そのもの”を検証しなければならないはずである。
“前月の反省会”と“頑張りますの決起集会”になってはいないだろうか?
MQ計画(販売計画)は“行動計画”そのものなのである。
もうひとつ重要なこと、それは、
MQ計画(販売計画)は誰が作るのか、である。
ここで「MQ会計の3つのポイント」が再度登場する。
「3.平易(中学一年程度)」に書かれている
「企業の組織全員が理解して動かないと利益アップはできません。」
MQ計画(販売計画)は、社長が決意表明した必要MQを
“社長と社長を補佐する社員”が一緒になって作らなければならない。
そしてでき上ったMQ計画は、社員全員が理解できなければならない。
・利益計画で決めた必要MQをどのようにして実現していくのか
・そのために必要なPQをどのようにして確保していくのか
だから「3.平易(中学一年程度)」が大事なのである。
それがMQ会計で未来を創造することにつながっていく。
MQ計画(販売計画)を作るためには、充分な時間を費やさなければならない。
作る時間、作成する過程そのものが重要であり、
作る工程において社長と社員の“○○力”が鍛えられるのである。
次回の「第3回・MQ会計で未来を見るために・・・」で解説しようと思う。
注2)利益計画
経営計画ではなく“利益計画”としたのは、MQ会計が“損益”だからである。
これを補完する役割が「マトリックス会計」。
MG研修をとおしてMQ会計をマトリックス会計に変換する方法を身につければ、
未来の資金繰り、未来のB/Sがわかるようになる。
MQ会計で未来を見るためには・・・
会計の目的は「決算書を作るまで」である。
しかし世の中はいまだに「決算書がわかる=経営が良くなる」という思考だ。
決算書は会計のほんの一部分でしかない。
決算書や会計の情報は
経営に使えるものもあるし、逆に使ってはいけないものもある。
過去の分析をしたとろで社長の欲しいモノは得られないし、
決算書本にはこれらのことは一切書かれていない。
そもそも会計の役割は“カネ勘定”である。
“カネ儲け(経営)”と混同してはいけない。
MQ会計の3つのポイントの「1.科学的」と「2.戦略的」は、
会計や会計の延長線上にあるCVP分析に期待することはできない。
MQ会計では、なぜ未来を考えることができるのか。
それは3つのポイントの1番目、
「1.科学的(科学的でなければ儲からない)」によるところが大きい。
71ページには次のように書いた。
- この場合の科学的とは「数学的で矛盾がないこと」です。
「数学的要素がどのくらい含まれているか」です。
数学は答えが出るまでの過程がとても重要です。-
このときは“数学的”という表現で曖昧にしている。
“数学”と聞いただけで拒否反応を示す人が多かったからである。
もうひとつは「3.平易(中学一年程度)」についてである。
当時の私の研究レベルでは、
これらについて深く掘り下げて書く勇気がなかった。
この本は15年前の私の研究レベルで書いている。
その後、MQ会計を現場で実践していくうえで
事例や経験も増え、研究も進んだ。
・
次回は「第3回・MQ会計で未来を見るために・・・」
「3.平易(中学一年程度)」について、
もう少し踏み込んでみようと思う。
(つづく)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
戦略MQ会計・DC・マトリックス会計
メルマガをご希望の方は、こちらからご登録いただけます
< 前の記事へ 次の記事へ >