Vol.506 資本金と内部留保

最近、ワイドショーやニュースを見ていて

「内部留保」という単語が頻繁に出てくることに気がついた。

番組の中でコメンテーターが発言している。

 

「新型コロナウィルスが蔓延し、

 さまざまな方面で経済に影響が出始めている。」

 

実際にPQの減少はGやキャッシュに多大な影響を与えることは

容易に想像がつく。PQ激減で倒産したというニュースも流れている。

さらにコメントが続く。


「リーマンショックのときよりも影響が大きい。

 国の手厚い政策を望みたいところ。」

 

「大企業のように、

 内部留保をたくさん持つ(内部留保がたくさんある)

 企業はいいかもしれないが、

 体力がない中小小規模企業は大変な事態に追い込まれている。」

 

             ・

 

では、「内部留保」とはいったい何のことなのか。

この単語を使っているコメンテーターや司会者は、

内部留保の意味をきちんと理解しているのだろうか。

 

「体力がある会社」とは、

具体的にどのような会社を指すのだろうか。

 

この状況が続く中で「どこまで持ちこたえられるのか」

という意味で使っているとしたら、

 

「いつまで持ちこたえられるのか」は、

「倒産を迎えるのは何カ月先なのか」ということと同じだ。

 

では、体力とは何のことなのだろうか?

 


 

その前に「資本金」について考えてみたい。

 

資本金とは決算書に載っている「資本金」のこと。

資本金という単語は、内部留保に比べて世間一般に浸透している。

 

ここに「資本金1億円の会社」があったとすると、

この1億円は何を意味するのか。

 

会社を設立した際に株主や出資者から集めたおカネの合計、

「元手(もとで)」。

パチンコや競馬をする際の「軍資金」と同じ意味だ。

 

会社が資本金をもとに利益を増やすという行為は、

パチンコや競馬と同じように

軍資金(元手)をいくら増やすかということ。

 

増えた差額のことを会計では「利益」と呼ぶ。

決算書の自己資本(純資産)の部には、これらの情報が載っている。

 

              ・

 

資本金1億円の会社があったとして、

「この1億円」は、会社設立時に集めた現金合計の「覚書、メモ」。

設立直後は、たしかに銀行口座には現金1億円が存在する。

しかし、次の瞬間から、支払いが始まった段階から、

現金1億円は減り始める。

 

ところが決算書に載っている資本金の1億円は、

増資や減資をしないかぎり永遠に1億円のまま。

利益を含む自己資本(純資産)はたんなる差額で実体はない。

けっして現金のことではないのだ。

  


 

ここから少しの間、利益の話。

「利益は実体がない」とはどういうことなのだろうか。

 

数の計算、100から60を引けば答えは40。

この40という数字は引き算の結果で

具体的な「もの」は存在しない。

 

では、たとえば「りんご」。

 

100個のりんごから60個を引いた

残り40個のりんごは具体的にイメージすることができる。

 

売上が100円で費用が60円だった場合の利益は40円だが、

この40はたんなる差額で「もの」は存在しない。

ところが多くの人は「利益=現金」だと思ってしまう。

 

なぜ「利益=現金」と思ってしまうのか、というと、

会計には「円」という単位がついているからだ。

数字に「単位」がついていると、

勝手に「円=現金」とイメージしてしまうのだ。

 

だから会計の知識がない人たち(たとえば社員など)は、

当期の利益が「1億円出た」となれば、

現金が1憶円増えたと考えるのは自然だと思う。

  


  

多くのコメンテータの発言を聞いていると、

「内部留保=現金」

という意味で使っている(ように私には伝わってくる)。

 

「内部留保」とは、

 

会社設立後これまでの利益(=差額)を累積したもの。

当然、内部留保も実体がない。(実体のない利益を累積しても実体はない)

 

決算書の「純資産の部」に載っている資本金をはじめ

利益準備金や別途積立金、繰越利益剰余金などは、

勘定科目として名前がついているだけで、その実体は「何もない」。

 

決算書や会計が苦手な社長でも

MGを3回やればこの感覚はつかめるはず。

内部留保とは「累積G」のことだとわかってくる。

 

決算書における累積G(=内部留保)は、

純資産合計から資本金の額を差し引いた「差額」のこと。

 

純資産合計が1億2千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は、

2千万円(純資産合計1億2千万円-資本金1億円)。

 

純資産合計が8千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は、

▲2千万円(純資産合計8千万円-資本金1億円)、

 

この差額が「▲1億円」を超えれば

その会社は自己資本割れ、債務超過の状態だ。

 

では「企業の体力とは何か?」

 

何をもって体力のある会社かどうかを判定するのか、

考えてみてほしい。

 


 

▼内部留保が多い会社は、

 ほんとうに潰れにくいのか!

 

 これを試せるのがMG研修。

 ゲームを通して経営を考えるMG研修2日間

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 戦略MQ会計・DC・マトリックス会計

 社長のための会計学 マトリックス通信
【発行元】株式会社アイティーエス 
【発行責任者】宇野 寛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 

 メルマガをご希望の方は、こちらからご登録いただけます

 ⇒ 社長のための会計学【マトリックス通信】