Vol.529 分析について考える

売上はもちろん伸ばしたいし、

生産効率を良くしたいし、、

営業(販売)力も強化したいし、、、

社員の思考力も伸ばしたい!

当然利益も増やしたい!!

 

じゃあ、この先どうする?!

社長はいろいろ考えます。

 

会社には営業会議のための資料、売上分析に使うデータ、

経理部で作成する経営資料やグラフなど、多くの情報が存在します。

 

私が企業の会議に参加して思うのは、

 

「資料やグラフが多すぎてよくわからない!」

 

です。

 

担当者は、所属している部門の資料やグラフを作り

前月の状況や計画に対する実績などを報告します。

しかし多くの場合、その説明を聞いていても

結局何を言いたいのか、

この先、何をどうしたいのかが伝わってきません。

 

どうしてでしょうか。

 

発表者は、前月(過去)のデータを集め、

聞き手(ほかの参加者)がわかりやすいような表にまとめ、

なぜこうなったのか、を訴えます。

 

ところが多くの場合、原因を解説し報告しているにすぎません。

分析をしているわけではないのです。

これではせっかくの会議も、時間のムダになってしまいます。

 

         ・

 

「経営分析」について考えてみます。

 

経営分析は決算書を使って行います。

生産性、安全性、収益性など

項目別に経営指標を計算し分析する方法です。

 

経営分析の参考書籍はたくさん出回っています。

経営指標の計算は、計算式に当てはめれば誰にでもできます。

昔は電卓を使って計算していましたが、

いまは会計ソフトが勝手に分析表を作ってくれます。

 

経営分析の手法をマスターするということは、

 

「計算された数字(指標)の意味を理解し

 総合的に会社の現状を言葉で表現できるようになること」

 

その先どうするのか?の決定は、経営者に委ねられます。

 

会計人やコンサルタントが決算書を使って分析する手法が

これにあたります。

 

たとえば自己資本比率、

 

「自己資本比率は会社にとってとても重要な比率です。

 内部留保を厚くし、自己資本比率を高めましょう。」

 

と言われたところで、

何をどうしたらいいのかさっぱりわかりません。

 

労働分配率、総資本回転率、流動比率、固定長期適合率、、、

 

難しい専門用語を並べて、最後は、

 

在庫が多い、人件費が利益を圧迫している、

原価率が高い、借入金が多い、粗利中心の経営をすべき、、、

 

そして結論は、、、

 

「利益が少ないのが一番の問題です。

 ですから、まず売上を増やすようにしてください。

 同時に原価を下げ、固定費の削減も必要です。」

 

これが会計における経営分析の限界です。

決算書をいくら分析しても、

社長が求めるような情報にはたどり着きません。

 

         ・

 

では、何のために分析するのでしょうか?

 

分析の基本、それは「だから何なんだ!」です。

 

自己資本比率が低い?

総資本回転率が悪い?

棚卸回転率が悪い?

労働分配率が高い??

 

だから何なんだ!です。

 

自己資本比率が低いのも総資本回転率が悪いのも

過去の結果、いま起きている現象です。

 

自分の会社を分析するということは

自分の会社を徹底的に考えること。

 

「だから何なの?」

「ふーん、それで!」

「なぜそうなるの?」

 

の繰り返しです。

 

多くの会計人やコンサルタントがやっているのはじつは分析ではなく、

数値をわかりやすく並べ、表やグラフを作成し、そして解説をするという

「作業」にほかなりません。

 

営業マンや工場の責任者に「現状での問題点は何ですか?」と聞くと、

彼らの多くは思い込みで話します。

 

思い込みとは、「目の前で起こっていることが重要な問題だ」

と思ってしまうことです。

過去の経験や先入観で「問題はこれだ!」と断定してしまうことです。

 

そこには分析(真剣に考えること)は存在しません。

 

たとえば、

 

「売上が伸びないのはなぜ?」

 

「どうして納期が遅れるの?」

 

このような質問をするとそれなりの理由を話し始めます。

しかしほとんどの場合、

いま起こっている現象を述べているにすぎません。

 

「なぜ、そうなったのか?」

「なぜ、このような現象が起きているのか?」

 

問題の本質までにはなかなか辿り着かないのです。

 

         ・

 

問題の本質に迫るためには「価値のあるデータ」が必要です。

データがなければ分析のしようがありません。

 

しかし多くの企業では、昔に誰かが決めた数値項目を、

誰かが決めた表に当てはめ、

毎月の経営会議などで発表や報告をするために、

あるいは管理目的のために作成し、

月ごと、あるいは決算期ごとのフォルダーに入れ、

期間が過ぎれば廃棄してしまうのです。

 

エクセルで作られたこれらの資料は価値のないデータのため、

真の分析ができません。

 

では価値のあるデータとは何でしょうか?

 

「なぜこうなるの?」

「もしこのようにすればその先こうなるかもしれない!」など、

いろんな疑問に対してどこまでも掘り下げ、追求できるデータです。

 

では、どこまで掘り下げればいいのでしょうか。

 

それは「アイデアが出るまで」、

「解決策らしき案が思い浮かぶまで」、

「仮説を立てられるまで」です。

 

そしてようやく次のステップに進むことができます。

 

業績が悪い会社の共通点、

それは価値のあるデータが蓄積されていないことです。

 

これでは分析は不可能。

まず価値のあるデータの蓄積が必須です。

 

「企業の業績を改善するためにどうするか?」

 

というような基本的な命題を解決するためには、

価値のあるデータが必要です。

 

「売上が伸びないのはどうして?」

 

もっとも重要な疑問に対して

 

「どうすれば売上が増えるのか!」

 

という方向性を明確にするためには

客観的な価値のあるデータを分析し、

 

「何でなの?」

 

「なぜそうなるの?」

 

「この部分はどうなってるの?」

 

そしてそこから

 

「もしかしたらこうなのかもしれない」

「だったらここの部分をこうすれば売上が増えるかもしれない」

 

という新しいアイデア、解決策らしき案や仮説が生まれます。

 

         ・

 

業績アップための分析、、、

 

集めた情報やデータを使って「なぜこうなったの?」と疑問をもち、

それをたどっていく過程で【考える行為】そのものです。

 

数値をグラフにし、

それぞれの関係性を見つけながら

 

「どうしてそうなるのか?」を考え続け、さらにその先を追究する。

 

分析手法を学ぶことでもなければ

分析ツールを使いこなすことでもありません。

 

分析をする行為とは「考えるプロセスそのもの」です。

 

考えることに慣れていない人、

訓練していない人は、本質に辿り着く分析はできません。

 

「分析力を身につける」ということは、

「考える方法を学ぶこと」でもあるのです。

 

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【発行責任者】宇野 寛
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