■昨年、ある企業の社内研修で
「ヒマなそば屋と忙しいまんじゅう屋」の講義を行った。
さまざまな意見が出て、
MQ会計を実践するうえで、
現場に置き換えて考えるいいきっかけとなったので、
今回のメルマガで取り上げることにした。
これまでにいろんな本で(一部では業種を変えて)紹介されているので、
目にした人も多いと思う。
1994年に日本能率協会マネジメントセンターから出版された
「<新版>経済性工学の基礎」の中に出てくる話で、
著者は「千住鎮雄(せんじゅしずお)、伏見多美雄(ふしみたみお)」の2名。
千住鎮雄さんは、あの有名な千住3兄弟の父親だ。
・千住 博(日本画家)
・千住 明(音楽家)
・千住 真理子(バイオリニスト)
原文はこうだ。
<そば屋とまんじゅう屋>
開店早々のひまなそば屋を考えてみよう。
この店は客が少なくて、店員も設備も遊んでいるとう時間がかなり多く、
お客がふえればそれだけ売上がふえるという状態(つまり手余り状態)になっている。
いまかりに、この店の”もり”そば1個当たりのコストと利益が表3.7のように計算されているとしよう。
ある日のこと、この店では、作ったもりそばを客に渡すとき、1個落としてだめにしてしまった。
ひまな店だから、すぐに1個余分に作って間に合わせた。落としたための損失はいくらつくだろうか。
[表3.7]1個当たりのコストと利益
売 価:400円
材料費・その他の変動費:150円
人件費:100円
償却費その他の固定費:70円
-------------------------------------
利 益:80円
一方、これとは対照的に、評判のよいまんじゅう屋があって、
最近売り出した洋風まんじゅうの売れ行きがよく、生産能力が需要に追いつかず、
1個でも余計に作ればそれだけ売上が増える状態だとしよう(これは手不足状態の例である)。
このまんじゅうの売価と費用は、前例の表3.7とまったく同じだとする。
ある日のこと、この店の従業員がまんじゅうを客に渡すとき1個落としてダメにしてしまった。
落としたための損失はいくらだろうか。それは上の”そば屋”場合と同じだろうか。
・
という問題だ。(この本を持っている人は53ページを参照)
私の講義では「答え」を解説するのではなく、
どのように考えるのか、結論に行きつくまでの思考の過程を重視する。
その意味でとてもイイ例題となった。
■講義のテーマを”これ”にしようと思ったのには、次のようないきさつがある。
研修の前日、なぜか、ふと、
「ヒマひまなそば屋と忙しいまんじゅう屋」の話を思い出した。
この本を私が読んだのはもう15年以上も前になる。
手元にないので、ネットで検索し思い出しながら問題を作った。
準備していた講義内容を急遽変えてまでこれに決めたのは、
MQ会計を現場の人たちに考えてもらううえで、とてもイイテーマだったからだ。
この講義をきっかけに、山形に帰ってからもう一度読み直したくなった。
ところが、いくら探しても見つからない。
誰かに貸してそのままになっているかもしれないし、
とにかく、ない、のだ。
そこで(しかたなく)もう一度買うことにした。
結構高い本である。(税抜:3,107円)
「経済性工学の基礎」ということは当然「応用」もある。
今回は「基礎」の本だが、「はしがき」を読んで固まってしまった。
<はしがき>
この本は、経営上のさまざまな意思決定の基礎として重要な経済性分析の諸原則を体系的に整理し、現実の企業実践に活かすための基礎的な考え方と計算技法をまとめたものである。
(中略)
・・・こと経済性分析の問題になると、必ずしも的確でセンスのよい分析が十分に行なわれているとは言えないようである。
1.基礎資料を収集し、解釈する段階で間違いが多い
2.経済的な有利さを比較し、評価する段階での間違いが多い
3.目的をあいまいにしたままの分析が多い
・
新版が出たのは1994年だが、初版は1982年である。
そしてこの「はしがき」が書かれたのは「1982年の春」となっている。
すでに40年が経過しているにもかかわらず、
「はしがき」に書かれている内容は今でもそのまま通用する。
つまり、40年経っても問題の基本は何も変わっていないことを、「はしがき」は示している。
続いて「本書のねらい」には次のような記述がある。
MQ会計を伝える側(税理士やコンサルタント)や原価計算信奉者にとっては
胸に突き刺さる内容が書かれている。
続きはこちら ⇒ https://www.mxpro.jp/vol-536xyz/
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