Vol.543 枝葉と根幹

■旅のまにまに

 

山形新幹線に乗るときの楽しみのひとつが、

JR東日本が乗客に向けて発行している30ページほどの冊子、

「トランベール」に載っているエッセイを読むことだ。

 

書いているのは山形市内在住の小説家、柚月裕子。

仕事や打ち合わせで東京に行くときには、

山形新幹線「つばさ」を利用するのだそうだ。

 

柚月裕子(ゆづき ゆうこ)

釜石市出身。2008年『臨床真理』で、第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。

13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。近刊に『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオの咲く夏』など。

 

トランベール9月号の彼女のエッセイ「旅のまにまに(16・発見は外にあり)」に、

担当編集者2人と取材旅行に出かけた話しが載っている。

 

                 ・

 

レンタカーで移動していたとき、ちょうど昼に差し掛かり食事をすることになった。

何を食べようか、相談していると、少し先に一軒のドライブインが見えた。

店の入口に「さざえめし」と書かれたのぼりが立っている。

私は以前、北陸で食べたことがあるが、とても美味しかった。

そう伝えると、ふたりとも食べたい、と言うので、そのドライブインでさざえめしを食べることになった。

店に入りさざえめしが運ばれてきたが、それを口にした私は箸を止めた。

 

 

途中のドライブインで食事した「さざえめし」は味がない、マズイのだ。

このまま残すか、我慢して食べるかの議論になるのだが、

これをエッセイにしてしまうのは、さすが作家である。

私がメルマガを書こうと思ったきっかけが次の文章だ。

 

 

(同行した編集者の)Yさんは何事も本質を追求する人で、それは仕事でも同じだった。

原稿を渡すと枝葉の部分ではなく幹に対して意見をくれる。

ごまかしたりうやむやにするのが嫌なのだ。

 

(中略)

 

発見は思いがけないところにあり、それが意外な形へと結びつく。

結果、その討論で新作の構想が生まれ、人物設定にまで繋がった。

これは、会議室やモニター越しで膝をつき合わせて生まれるものではない。

外に出て、いろいろなものを見て、経験して得られるものだ。

いまでは、作品のアイデアをくれた味がないさざえめしに感謝している。

 

                 ・

 

発想やアイデアは会議室では生まれない。そして次の瞬間忘れてしまう。

思いついたことは、その場で書き留めるしかない。

 

「枝葉ではなく幹に対して意見をくれる」

 

この一節で考えさせられた。

 


■枝葉と根幹 

 

制度会計のもとに生まれた管理会計は、

当初は制度会計の枝葉の部分であったかもしれないが、

いまは根幹として成立している。

 

管理会計は、その人の立ち位置によって印象が異なる。

大企業の社員であれば「予算管理・原価計算・コスト管理・部門別損益管理」、

中小小規模企業では「CVP分析」をイメージする人も多い。

CVP分析は、企業の収益性分析にはごく当り前のように使われているし、

税理士やコンサルタントがごくフツーに指導に使っている。

 

CVP分析の最大の欠陥、

 

それは、

 

「変動費の定義が明確でない」

 

ところだろう。

 

※)CVP分析:Cost-Volume-Profit Analysis を略したもので、

コスト(Cost)販売量(Volume)利益(Profit)それぞれの頭文字を取ったもの。

費用を変動費と固定費に分解し損益分岐点分析を行う手法のひとつ。

 

 

■消耗品はFかVか

 

管理会計のCVP分析において、

費用を固定費と変動費へ分解(固変分解)する際に例題として挙げられるのが“消耗品”。

次の2つの説明を読んでみてほしい。

 

1.製造経費に含まれる消耗品は変動費

多くの製造経費は固定費だが、消耗品だけは変動費だ。

根拠は、荷造りテープなどの消耗品は出荷量に比例して使用され、

ウェスは生産量に比例して使用される。

工場で使用する工具類も生産量に比例して消耗する。

このような、変動的要素が強い原価科目は変動費になる。

 

2.修繕費は変動費か固定費か

修繕費は変動費と固定費の要素が入った準変動費・準固定費。

工場や事務所などの建物の修理は固定費、工場設備の場合の修繕は変動費になる。

車両の定期点検や設備の定期点検、オーバーホールは固定費だ。

しかし、壊れてから修理した場合は変動費になる。

機械に関しては、生産量の多い月ほど修繕費がかかる。

生産量に比例するために変動費として処理することになる。

 

このような解説は、これまで多くの書籍やネットで紹介されてきた。

書いているのは中小企業診断士、会計人たちだ。

以前に書かれた本を参考にしているからなのか、どの記事も似たり寄ったり。

書いている本人はこの内容に疑問をもたない。

 

CVP分析では、なぜここまで“固変分解”にこだわるのだろうか?

 

それは、“変動費率”を重要視するからである。

損益分岐点を求める際にも、損益分岐点分析を行う際にも、

そして計画を立てる際にも、“変動費率”を使うからである。

CVP分析にとって“変動費率は絶対”なのである。

 

「出荷量に比例・生産量に比例」の比例は、

本来算数で使う比例関係の比例とは明らかに異なる。

生産量が増えれば、なんとなく消耗品も増えるでしょう、

という程度の説明にしか聞こえない。

 

MQ会計では、“率ではなく額”が重要だ。

未来を“額”で考える。

消耗品も修繕費も“V”ではない。製造にかかる“F”なのである。

 

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【発行責任者】宇野 寛
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