Vol.495 まことしやかに言われ続けてきた財務分析の常識

こんなことを聞いたことはありませんか?
 
支払利息が売上高の3%を越えたら危険
借入金の利息は売上高の1%未満であれば問題なし
支払利息が営業利益の50%以上の場合は借入金過多
借入は平均月商(月平均売上)の4ヵ月が限度
 この基準を超えると借入金返済が資金繰りに与える
 
限界利益率(粗利率)を上げるには利益率の高い商品を売ればいい
経常利益率は10%は必要
飲食店の原価率は30%以下に抑える
 
自分の給料の3倍売れば利益が出る
労働分配率は50%以下が目安
安定した利益を出すには損益分岐点比率を下げること
 
設備投資の目安は投資額の3倍の売上が見込めるかどうか
固定長期適合率は100%以下が理想的(100%を超えていれば問題)
設備投資は5年で回収を目安として考えるのが望ましい
 
流動比率は200%以上あれば資金繰りは安全
当座比率は100%以上であれば安全
総資本経常利益率は10%以上が望ましい
 
40年前、何も知らなかった私は
これを信じてしまいました。
 
どうしてなのか、
 
思いあたるふしがあります。
 
はじめて聞いた財務分析(決算分析)の指標の意味と計算式、
 
この指標の数値は高い方が良いのか、
それとも低い方が良いのか、
 
簿記会計を知っているだけで、
決算書が読める作れるというだけで、
これを学び実践することに対して何の疑問も持ちませんでした。
 
いったん覚えると使ってみたくなります。
学んだ知識は披露したくなります。
税理士事務所で実際に顧客に指導してきました。
(いま思えば、ゾッとします)
 
              ・
 
「原価率は低い方が良い!(=利益が増える)」
 
というフレーズに、
多くの人は疑問を持ちません。
 
「原価率と粗利率」、「変動費率と限界利益率」はたんなる割合。
 
全体を百としたときの比率です。
2つを合計すれば必ず100%になります。
片方を下げれば片方が上がります。
 
「原価率を下げる」ということは、
売上全体に対して原価の割合を下げること。
相対的に粗利率が上がります。
 
なぜ、原価率が低ければ利益が増えると思ってしまうのでしょうか?
 
このことに、ほとんどの人は疑問を持ちません。
多くの人たちが、
「平均は高いほうが良い!」と思っているように、、、
 
               ・
 
同様に財務分析を学んだ人たちは
 
「流動比率は200%以上が望ましい」
 
というフレーズに疑問を持ちません。
 
「なぜ、200%なの?」
 
昭和44年に書かれたある論文の一節です。 
 
財務諸表分析は、すでに1870年代のアメリカでは、
 銀行が貸付目的のために財務諸表を要求し始めている。
 1890年代の後半に、流動負債に対する流動資産を比較する実務が登場した。
 事実、財務諸表分析に比率を用いることは、
 流動比率の出現によって始まったということができる。
 
その後、1900年代には多くの比率が考案され、絶対比率基準が登場した。
 もっとも有名なのが流動比率の2対1基準。
 企業比較分析の必要性が認識されはじめ、相対比率基準も登場する。
 経営管理目的のために比率を使うという展開が始まりつつあった。
 
財務分析は「流動比率」からはじまったようです。
そして100年以上たったいまでも当時のまま、
「流動比率は200%以上が望ましい(流動比率の2対1基準)」なのです。
 
決算分析のもとになった財務分析は、1870年代にアメリカの銀行が、
 融資先や投資先である企業の債務返済能力や財産状態の良否を知るために
 貸借対照表の提出を求め、これを詳細に分析したことに起源する
 といわれている。現在でも銀行の審査部では経営分析を行っている。
 
財務分析に慣れている人たち、
具体的には中小小規模企業を顧客にもつ税理士やコンサルタントが
MQ会計を学ぼうとしても、なかなか身につきません。
 
「分析という手法を学んでそれを使いこなす」ことに慣れてしまい、
MQ会計も同列に論じてしまうのです。
MQ会計の知識や手法を学び現場で分析や解説をすることだと
勘違いしてしまうのです。 
 
MQ会計の勉強に同じ時間を費やした社長たちと比較すると、
現場で実践に移しているのは圧倒的に社長たち(MQを使う側)です。
 
MQ会計は分析や解説をするためにあるのではありません。
  

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【発行元】株式会社アイティーエス 
【発行責任者】宇野 寛
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