Vol.497【決算書は究極のドンブリ勘定】

【決算書は究極のドンブリ勘定】
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□■  戦略MQ会計・DC・マトリックス会計
■□   社長のための会計学 【マトリックス通信】
□■   Vol.497 2019/08/19
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■前回の続きです。
 前回からだいぶ時間が経過していますので、最初からはじめます。
 
 (ご注意)
 これから紹介するのはフィクション、架空の話です。
 勉強のためだと思って、少しの間「倫理・道徳」は忘れてください。
 
                ・
 
 ◎Aさんはコンビニの店員です。
  今月は会社の決算、店内とバックヤードの商品の棚卸(たなおろし)を
  任されました。
 
 ◎上司から次のように言われました。
 
  「もし、決算で利益が出たら"臨時ボーナス"を支給します」
  「だからきちんと数えてください」
 
  「えっ、臨時ボーナスがもらえるんだ。がんばって棚卸をしよう!」
 
 終わったあとに休憩をしていると
 倉庫の片隅にまだ数えていない商品があることに気づきました。
 
 ざっと見ただけで500個はありそうです。
 
 「ちょっと待てよ、、、」
 「利益が出れば良い思いができる」
 
 臨時の収入はとても魅力的です。
 よこしまな考えが一瞬Aさんの頭をよぎります。
 
 
 この500個を追加したほうがいいのか、、
 それとも、このまま追加しないほうがいいのか、、、
 
                ・
 
 さて、ここで質問です。
 あなたがAさんだったら臨時ボーナスをもらうためにどちらを選ぶでしょうか?
 
 1.この500個を追加して報告する
 2.追加しないでこのまま報告する
 
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■そもそも、なぜ決算で「棚卸(たなおろし)」をしなければならないのか。
 棚卸は企業の業績にどのように影響するのか。
 
 理由は、
 
 決算書を作る際に、
 ・売上原価を確定させるため
 ・利益を確定させるため
 
 です。
 
 最終利益は税金計算のもとになります。
 ですから棚卸の金額は税額に影響を及ぼします。
 
 棚卸は、先に在庫の【数量】を数えます。
 
 本当は100個あったものを120個にすると
 利益は20個の金額分増加します。
 これを故意に行うと「粉飾決算」。
 
 100個あったものを80個だったことにすると
 20個の金額分、利益は減少します。
 故意に行った場合は「脱税」です。
 
 ・ないものをあるように見せかける=粉飾
 ・実際にあるものを隠す=脱税
 
 Aさんは、
 
 「1.この500個を追加して報告する」
 
 を選択すれば会社の利益は増えて臨時ボーナスを手にすることができます。
 ただし、意図的に行った場合には、問題ですね。
 
 なぜなのか!
 
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 ★★ ここからが本題です ★★
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■読者のHさんからメールが来ました。
 
 ◎いろいろ、考えて
  2の「追加しないでこのまま報告する」
  にします。
 
  1は「在庫を増やすと利益が減る」と考えます
 
  (途中に結論に至る過程が書いてあります)
 
  この考え方であってますか?
  次回のメルマガで解答お願いします
 
 私が会計事務所に勤めていた40年前にこの問題を思いつき、
 企業の営業や製造現場、そして経理で質問してみました。
 
 会計に詳しくない営業や製造の反応は「予想通り」、
 
 「2.追加しないでこのまま報告する」
 
 です。10人中10人がこの答え。
 Hさんも同じ答えです。(内心ほっとしています)
 
 6月の東京MG研修では、
 マトリックス会計の講義の中でこの話をしました。
 マトリックス会計表をじっくり見れば、
 なぜなのか、の理由がわかります。
 
 じつは、私が簿記会計を習いはじめたとき、
 「売上原価」のところで苦労しました。
 
 簿記会計に詳しくない人は、
 「2.追加しないでこのまま報告する」を選びます。
 とても素直な考えだと思います。
 
 なぜなら、
 「期末の在庫が少なければ、期中でたくさん売れて利益が出てるはずだ」
 と考えるからです。
 
 ところが会計の世界では答えは、まったく逆。
 
 
■「売上原価」は「会計用語」です。
 読んで字のごとく
 「売るためにかかった原価、売上に対応する原価」です。
 
 売上原価を求める計算式です。
 
 「売上原価=期首在庫+当期仕入(当期製造)-期末在庫」
 
 この式の意味するところは、
 
 会計では実際に売れた分の原価がわかりません。 
 そこで先に売れ残った商品を調べます。
 期首にあった商品に当期で仕入れた商品を足して、
 売れ残った商品を差し引けば、
 当期に売れた商品の原価がわかる【はず】です。
 
 製造業でも同じように、
 先に売れ残った製品を調べます。
 期首にあった製品に当期に製造した製品を足して
 売れ残った製品を差し引けば、
 当期に売れた製品の原価がわかる【はず】です。
 
 会計用語の説明は、とにかく素人にはわかりにくい!
 
 前期からすでにあった在庫と当期に仕入れたものから
 どれが売れて、どれが売れていないのか、わかりません。
 
 売った分の金額が特定できないのです。
 
 で、
 
 しょうがないから、
 
 残った在庫を調べます。
 
 
■個数で考えたほうがわかりやすい。
 
 1.期首に商品在庫が10個ありました。
 2.期中で50個仕入れました。
 3.合計すると60個になります。
 
 4.会計では売れた個数がわかりません。
 5.残った在庫を調べたら12個ありました。
 
 6.期首在庫10個+当期仕入50個ー期末在庫12個=売上原価48個
   たぶん48個売れている【はず】
 
 コンビニの定員Aさんは、
 倉庫の片隅にあった在庫を足すか、そのままにするか、迷ったわけです。
 
 かりに倉庫の片隅に3個あったとします。
 この3個を加えると売上原価の個数は減ります。
 
 期首在庫10個+当期仕入50個ー期末在庫15個=売上原価45個
 
 売上原価は費用(経費)です。
 3個分の経費が減ればその分利益が増えます。
 
 Aさんは、「1.この500個を追加して報告する」と
 会社の利益が増えて臨時ボーナス!となるわけです。
 
 文章で説明しても、とにかくわかりにくい!
 
 MQ会計ではこんな「わかりにくい」ことは起きません。
 だから会計が苦手な人も使えるのです。
 MQ会計は「わかりやすい庶民の会計」です。
 
 
■会計を専門的に学んできた人の答えは、
 
 「そんなのあたりまえだのクラッカー!」
 
 当然、「1.この500個を追加して報告する」と答えます。
 
 ところが、会計を知らない人からすれば
 
 「そんな、バナナ!」です。
 
 フツーの感覚とは逆なのです。
 
 Hさんの答えは、私は好きです。
 
         ・
 
 会計の世界にどっぷりつかっていると
 会計思考から抜けられなくなってしまいます。
 
 庶民の「逆」の感覚がわからなくなります。
 税理士と社長の会話が噛み合わなくなります。
 
 「原価を減らすには原価率を下げる!安く仕入れる!!」
 というような安易な発想しか浮かばなくなります。
 
 私は、40年前にはじめて会計を学んだとき、
 「売上原価」がなかな理解できず、
 なんという世界なんだ!と思いました。
 
 会計の世界で生きていくということは、
 会計の世界の常識にどっぷりつかるということ!
 を学びました。
 
 会計の世界を離れたいま、客観的に会計を見てみると
 このようなおかしなことが他にもたくさん目につきます。
 
 棚卸資産回転率、売上債権回転期間、自己資本比率、
 労働分配率、付加価値の定義、
 変動費や固定費も同じように感じてしまうのです。
 
 
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 ★★ 決算書は「究極のドンブリ勘定」 ★★
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■なぜ、決算書はドンブリ勘定なのかというと、
 
 一生懸命時間をかけて棚卸をしたとして、
 もし、それが正しい数字だとして、
 
 棚卸は「数量の把握、数えるのが先」です。
 
 では、最後に何をするのか!
 
 金額に換算するために「単価」を求めなくてはなりません。
 金額で計算してはじめて決算書に計上できるのです。
 これが「棚卸資産の評価」です。
 
 この「評価のしかた」が、
 私が感じる「究極のドンブリ」です。
 
 では、棚卸の評価に使う単価はいつの時点のものか?
 
 同じ原材料でも、高いときもあれば安く買えるときもある。
 では、高い単価と安い単価のどちらを使えばいいのか。
 
 評価のしかたが、たくさんある。
 原価法に低価法、
 
 個別法、先入れ先出し法、後入れ先出し法、
 売価還元法、総平均法、移動平均法。
 
 そして究極の評価、それが、「最終仕入原価法による原価」
 
 期末に一番近い時点の仕入単価を
 棚卸評価の単価にするというものです。
 
 たとえば小麦粉のキロ単価が期中で値上がりし
 期末に大幅に値下がりすると、、、
 
 その逆もあるわけです。
 だから本当の原価などだれにもわかりません。
 
 でもOKです。
 きちんとした会計のルールなので「正しい」のです。
 
 
■MQ会計におけるVQはどうなのか?
 
 VQはPQに対応しています。
 Qは販売数量です。
 VQとPQのQは同じです。
 
 MQ会計におけるVQは棚卸に影響されません。
 だからVQと売上原価は「違って当たりまえ」、
 使う目的が違う、のです。
 
 今回の記事を書くために
 ネットで「売上原価」を検索してみました。
 出てくるのは会計事務所と会計系コンサルティング会社。
 
 私の感想、
 
 「会計に詳しくない人が読んでもわかりにくいし面白くない。
  専門用語がやたら出てくる。なおさら興味がわかない。」
 
 これは決算書の解説や分析にも通じます。
 
 もっと工夫をしなければなりません。
 アイデア、発想力、想像力(創造力)、創意工夫が必要です。
 
 なぜ、いま多くの税理士がMQ会計のセミナーに来るのか。
 MGをやろうと思うのか。
 大きな理由の一つです。
 

 

●2014年からはじめた「戦略MQ会計3日間コース」は
 今年で丸5年になりました。
 途中で改良に改良を重ね、
 セミナーで配付するテキストも改訂・第10版です。
 
 ところで、この3日間の連続セミナーは、
 今年の10月で最後にしたいと考えています。
 来年は別の形でと思っていますが、日程を含めいまのところは未定です。
 
 9月1日(日)までは、特別割引価格でご参加いただけます。
 テキストも最後の改訂版です。
 
 ▽東京・戦略MQ会計【理論と応用】2日間
  2019年10月18日(金)/ 19日(土)
 
 ▽東京・戦略MQ会計【実践編】
  2019年10月20日(日)
 
 
●当初予定していた定員が一杯になりました。
 開催まで日にちがありますので追加で受付を開始します。
 
 ▽2019年10月25日(金)~26日(土)
  MG研修2日間【社長のためのキャッシュフロー】
 
 
●9月10日(火)「博多・実践!戦略MQ会計【特別講座】」は、
 満席になりました。
 キャンセルが出た場合のみ再受付します。

 

 

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