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中国では貸借対照表(B/S)を『資産負債(资产负债)表』と呼ぶそうです。なぜ名称に自己資本(純資産)がないのでしょうか。
日本では“自己資本比率”を重視します。総資本(負債と資本の合計)のうち自己資本の占める割合です。しかし、貸借対照表というのは真の財政状態を表しているとはいえません。現金預金や売掛金などはキャッシュそのものなのですが、製品や仕掛品そして建物や機械設備などは、会計や税務の一定ルールにしたがって計算された「評価額」です。
自己資本は、資産と負債の差額です。中国での「資産負債表」という呼び方はとても合理的だと感じます。
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私が会計を学びはじめたとき、「借方・貸方」と「貸借対照表」だけは馴染めませんでした。のちに「バランスシートとは残高表」という真の意味を知るのですが、そのときに強烈に感じたのが、「誰がどのような理由で貸借対照表と訳したのか」という疑問です。当時の会計本には「貸借が一致している(バランスが取れている)からバランスシートという」という解説が、たしかに載っていました。
“日本の会計の歴史”を調べている最中、ある文献を見つけました。この文献を書いたのは、大阪経済大学経営情報学部教授、京都大学名誉教授(当時)の「高寺貞夫」さんです。
付記:本稿は1966年11月経営史学会第2回大会における報告にもとづき作成された。
(京都大学)
と最後に書かれています。1966年2月に発行された『「経済論叢」第97巻 第2号(京都大学経済学)』がもとになっています。
高寺教授は、『「貸借対照表」制度導入期におけるイギリス式と大陸式の接合』で次のように書き記しています。一部抜粋して紹介します。「専門家が会計用語を使うこと」について当時から意識していたことが窺えます。
1「貸借対照表」という用語はバランス・シートの訳ではない
「会計用語は、ビジネス用語と同じように、単にそれがコミュニケーションのための容易な手段であるという理由だけで、一種の特殊社会の通用語として、特有の意味をもたしてしばしばルーズに使われるので、」会計社会の住人としてその約束を了解している会計専門家の間では通じても、会計社会の外側に住んでいる門外漢にはまったく通じないか、または別の意味にとられる場合が少くない。そして、このことは、もっともポピュラーな「貸借対照表」という用語についても、そのまま当てはまる。
明治6年(1873年)に福澤諭吉が書いた『帳合之法』では、バランスシートに「平均表」という訳語を当てていました。そのまま“平均”と訳していたのです。その後、明治20年(1887年)頃までの簿記書には、「貸借対照表ということばは一度も出てこない」のです。
2「貸借対照表」という用語の創出過程
それでは、貸借対照表という用語はいついかなる過程において創造されたのであるか。結論を先にいうと、それは、明治10年代後半にきわめて精力的におこなわれた商法編纂過程において、当時バランス・シートを意味する会計用語としてかたまりかけていた「資産負債表」を無視して、「独逸語の Bilanz seiner Activen und Passiven なる語を訳した」「法文上の用語として造語せられた」ものであった。
(中略)
明治23年4月27日に公布された旧商法が初めて造った語であり、旧商法に於て、初めて貸方借方の対照表即ち貸借対照表なる成語が〔法律語として〕鋳造されたのであると説いている。
なんと日本でも「資産負債表」が使われようとしていた時期があったのです。そして「貸借対照表が“造語”だった」とは驚きです。私の長年の疑問「どのような理由で貸借対照表と訳したのか」が、ようやく解消されました。ただし、“誰が鋳造したか”(※は、わかりません。
※)調べていくうちに「貸借対照表」と言い出したのは誰か、
なぜ「貸借対照表」になったのかが明らかになってきました。
近日中に公開したいと思います。
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